人間の体内には、ホルモンや神経伝達物質を筆頭に、様々な生理活動に作用をもたらして、体の働きを調節する、「生理活性物質」というものが存在します。その中でも女性の体内で大きな役割を果たしている物質のひとつに「プロスタグランジン」があります。今回は、プロスタグランジンとは何か、その作用についてもご説明します。
プロスタグランジンとは?
プロスタグランジンは、人間の体内の様々な組織や器官に存在する、ホルモンに似た働きをする生理活性物質です。プロスタグランジンが機能を発揮するためには、特定の「受容体(レセプター)」と結合する必要があります。
プロスタグランジンにはいくつか種類があります。その中でも「プロスタグランジンF2α(PGF2α)」、「プロスタグランジンE2(PGE2)」、「プロスタグランジンE1(PGE1)」は、子宮収縮を引き起こす作用を持っています(※1)。
プロスタグランジンの作用は?生理痛の原因なの?
女性の体の仕組みとして、排卵後に妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜がはがれ落ちて出血が起こります。これが「生理(月経)」です。そしてこのときに子宮内膜から分泌されるのが、プロスタグランジンです(※2)。
プロスタグランジンには、子宮を収縮させ、不要になった粘膜を血液とともに体外にスムーズに押し出す働きがあります。このときプロスタグランジンが過剰に分泌されると、子宮が強く収縮し、下腹部痛など生理痛の要因となります。
また、プロスタグランジンには痛みを強める作用を持つものもあるので、プロスタグランジンが頭で作られた場合、頭痛などの症状が現れることもあります(※3)。
もし、日常生活に支障をきたすほど生理痛がひどい場合は「月経困難症」と診断されることもあるため、強い痛みに悩まされている人は、婦人科で一度相談してみることをおすすめします。
プロスタグランジンの分泌を抑えるには?
先ほどご説明したとおり、プロスタグランジンの過剰分泌は生理痛を引き起こす要因のひとつです。通常、生理はおよそ月に1回のペースで来るものなので、快適に過ごすためにできるだけ生理痛を抑えたいところですよね。
プロスタグランジンの作用についてはまだ明らかになっていない部分もありますが、体が冷えて血行が悪くなると月経血の排出がスムーズに進みにくくなるため、経血を体外に出そうとして分泌量が増えると考えられています(※4)。
普段から食事や運動などで体を冷やさないような生活を心がけ、生理中は特に、エアコンや薄着によって体を冷やさないように心がけることで、プロスタグランジンの過剰分泌を防ぐことができるかもしれません。
実際、生理中にお腹の周りをカイロなどで温めると、生理痛が緩和されることも多いですよ。
また、ストレスが原因でホルモンバランスが崩れると、痛みをより強く感じることもあります。生理が来ると憂うつな気分になってしまう人もいるかもしれませんが、適度にストレスを発散して生理痛をやわらげたいですね。
プロスタグランジン製剤とは?陣痛促進に使われるの?
最初に触れたとおり、プロスタグランジンには種類があります。なかでも子宮収縮の作用を持ち、出産のときに陣痛を促すための子宮収縮薬(陣痛促進剤)として使われるのが「プロスタグランジンF2α(PGF2α)」と「プロスタグランジンE2(PGE2)」です。それぞれ製剤になっていて、産婦人科などで使われています。
プロスタグランジンF2α製剤は点滴で注入する薬で、長くゆるやかな子宮収縮を起こします。他の子宮収縮薬と比べると、効き目に個人差が少ないという特徴があります。
プロスタグランジンE2製剤は経口薬で服用しやすい反面、点滴投与よりも量の調節がしにくいという特徴もあります。
プロスタグランジンなどの子宮収縮薬には、吐き気や嘔吐などの副作用があります。また、強すぎる陣痛によって子宮破裂や胎児機能不全などを引き起こす可能性もあるため、子宮収縮薬を使用する前には必ず医師などから説明を受け、患者や家族の同意が得られている必要があります(※5)。
プロスタグランジンと上手に付き合いましょう
毎月のように生理痛に悩まされている人も多いと思いますが、生理痛には、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質が関係していることがよくあります。
プロスタグランジンが分泌されること自体は、生理現象として正常なことなので、「ある程度の痛みが現れることは仕方ない」と割り切って、なるべく生理痛をやわらげる工夫をしましょう。
過剰に分泌されると生理痛を引き起こしてしまうプロスタグランジンですが、出産のときには陣痛の促進に力を借りることもあるかもしれません。プロスタグランジンを製剤として使用するときは副作用もあるので、医師からの説明を受け、疑問点があれば解消してから投与してもらいましょう。