40代の女性で「指輪が入らなくなった」「今まで履いていたブーツが入らなくなった」という人もいるのではないでしょうか?体重の増加を疑う人もいるようですが、もしかしたら、更年期障害の症状かもしれません。そこで今回は、更年期にむくみが出る原因と対策についてご説明します。
更年期に見られるむくみとは?
むくみとは、皮膚の下にある皮下組織に余分な水分がたまっている状態をいいいます。
人間の体は、心臓から全身の細胞へ血液を押し出しながら酸素や栄養素を送り届けています。
栄養や酸素を送り届けるのと同時に、細胞から排出された二酸化炭素や老廃物を回収しながら心臓に血液を戻します。
たとえば、足を流れている血液は、心臓に戻るときは重力に逆らうことになります。
このとき、ふくらはぎの筋肉が血液を心臓に送り返すポンプの役割をするのですが、ふくらはぎの筋肉が上手に収縮できないと血液がふくらはぎで停滞し、足のむくみを引き起こしてしまいます。
また、塩分を摂りすぎたり、アルコールを飲んだりしたあとも、むくみやすいことが知られています。
これは、体が水分を溜め込むことで塩分濃度を調整したり、アルコールと一緒に排出された水分を取り戻そうとするためだと考えられています。
更年期に体や顔にむくみが出る原因とは?
更年期にむくみがひどくなる原因は、ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れと考えられています。
女性は40代にさしかかると、卵巣の機能が低下し始めます。
まず、妊娠や月経の準備を始める働きをする「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌量が減り始めます。
そうすると、脳から「エストロゲンをもっと出すように」という指令が出され、「卵胞刺激ホルモン」が大量に分泌されるようになります。しかし、卵巣はその指令通りにホルモンを出すことができず、脳と卵巣の連携に混乱が生じます。
このような、脳と卵巣の連携の混乱、ホルモンバランスの変化が自律神経の中枢に影響を及ぼし、血管の収縮や血液量を上手にコントロールできなくなります(※1)。
そのため代謝も悪くなり、老廃物や水分を溜め込んでしまって、むくみを引き起こすと考えられています。
更年期のむくみに処方される薬は?
更年期にひどくなりやすいむくみには、漢方薬が処方されることが多いようです。
むくみは、漢方では「水の異常」とされていて、この症状には「桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん)」が処方されることが一般的です(※2)。
また、水の異常の対策には、十分な睡眠や、日中に屋外で体を動かすことも大切とされています(※2)。そのため、漢方薬を処方される際に、生活改善のアドバイスをもらうこともあります。
更年期のむくみ予防とは?
むくみを防ぐうえで大切なのは、体内の水分調節をスムーズにすることです(※3)。
ここでは、体内の水分調節をスムーズにするための食事、ストレッチなどの運動、冷え対策についてご説明します。
食事の工夫
体の細胞の中の水分は、ナトリウムがポンプ役となって吸い上げて調整しています。そのため、このポンプが正常に機能しなくなると、むくみを引き起こしてしまいます。
カリウムにはナトリウムのポンプを正常に機能させる働きがあるので、むくみの予防にはナトリウムとカリウムをバランスよく摂ることが大切です。
みそや醤油といった調味料を多く使う日本人は、ナトリウムを過剰に摂取する傾向があるので、減塩を心がけましょう(※3)。
一方のカリウム、昆布や大豆、トマト、バナナ、いも類に多く含まれているので、積極的に食卓に取り入れましょう(※3)。
運動・ストレッチ・マッサージ
立ちっぱなしや座りっぱなしの状態が続くと足が血行不良になり、むくみの原因になります。
こまめにストレッチをしてふくらはぎの筋肉をほぐしたり、ふくらはぎをなでるようにマッサージしたりして、余分な水分や血液の流れをよくしましょう。
また、ウォーキングなどの運動を行うと、足の筋肉が発達し、ふくらはぎのポンプ機能が活発になります。一駅歩く、階段を使うなど、日頃の生活でできることから始めてみてくださいね。
冷え対策をする
冷房が効いた部屋に長くいると、自律神経の働きが鈍くなってしまいます。
足や肩周りにストールをかけるなどして、体が冷えるのを防ぎましょう。
また、夏場でもシャワーで済ませるのではなく、ぬるめをお湯に浸かって、血液の循環をよくするようにしましょう。
更年期のむくみは生活の見直しで対策を
手足や顔がむくみやすくなると、お気に入りの指輪や靴を身につけられなくなることもあるので憂うつですよね。
しかし、更年期にひどくなるむくみは、漢方薬を服用したり生活習慣を見直したりすることで改善できます。更年期は生活習慣病を発症しやすいタイミングでもあるので、塩分の摂取量を見直すいい機会でもありますね。
そうはいっても、あまりにもむくみがひどくて辛い場合は、腎臓や肝臓の病気が隠れている場合もあります。なかなか改善されない場合は、早めに病院を受診するようにしてくださいね。