生理前に「PMS(月経前症候群)」の症状に悩まされる女性は多いですよね。毎月じっと我慢している人もいるかもしれませんが、避妊薬として知られる低用量ピルを飲むことで、そのつらさが緩和されるかもしれません。今回は、PMSの症状に対する低用量ピルの効果と、気をつけたい副作用、その他のPMSの対処法などをご説明します。
PMS(月経前症候群)とは?
PMSは「Premenstrual Syndrome」の略で、日本語では「月経前症候群」と呼ばれる、生理の3~10日前に起こる精神的・身体的トラブルの総称です(※1)。
PMSの症状は個人差が大きく、胸・お腹の張りや頭痛、手足のむくみ、吐き気、めまいといった症状がいくつか重なって体に現れる人や、気分が落ち込んだり、イライラしやすくなったりと精神的な症状に悩まされる人もいます(※1)。
これらの不快な症状は、生理前にだけ現れ、生理が始まると消えることがほとんどです。
PMSにピルが効果を発揮する理由は?
PMSが起こる原因は、まだはっきりと解明されていませんが、主な原因のひとつはプロゲステロン(黄体ホルモン)だと考えられています(※1)。
上図のとおり、女性の体では、生理周期にあわせて、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2種類の女性ホルモンがバランス良く分泌されています。
排卵後~生理前の「黄体期」に黄体ホルモンの分泌が増えることが誘因となって、PMSの症状が引き起こされるのではないか、と考えられています(※1)。
低用量ピル(経口避妊薬)には、エストロゲンとプロゲステロンに似た成分が配合されていて、正しく服用すると排卵後と同じホルモンバランスの状態を体内で作り出すことができます。
低用量ピルでほぼ確実に避妊できるのは、脳が「すでに排卵が済んだ」と認識することで、実際の排卵が抑えられるためです。
低用量ピルを継続して飲むことで、自然な状態よりもホルモンバランスの変動の幅が小さくなり、体内の女性ホルモンの量が安定するため、PMSによる諸症状がやわらぐとされています(※1)。
PMSにピル!副作用もあるの?
避妊だけでなくPMSの症状緩和にも効果が期待できる低用量ピルですが、副作用もあります。
あまり低用量ピルを服用したことがない人の場合、体が慣れるまで1~2ヶ月程度は一時的にめまいや吐き気などの症状が出る場合があります。
低用量ピルを何シートか使い続けるうちに症状が現れなくなることが多いですが、どうしてもつらいときは婦人科で相談しましょう。
また、頻度は低いものの、低用量ピルの副作用で「血栓症」が起こることもあります(※2)。血栓症は、固まった血液が血管につまり、悪化すると脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気につながる恐れもある病気です。
低用量ピルを飲んでいる期間に激しい腹痛や頭痛、息苦しさ、けいれんなどが現れたときは、血栓症の前兆である可能性もあるため、処方された病院をすぐに受診してください。
PMS治療のピルは保険適用される?
「避妊目的で」処方される低用量ピルは、基本的に保険が適用されず、全額自己負担で1シート(約1ヶ月ぶん)あたり約3,000円かかります。ジェネリック医薬品であれば、それよりも若干安く買うことができますが、いずれにしても金額は処方してもらう施設によって異なります。
一方、婦人科で月経困難症(重い生理痛)と診断された場合に処方される、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤は保険が適用されます。
たとえば「ルナベル」(またはジェネリックの「フリウェル」)や「ヤーズ」などは1シートで約6,000~7,000円ですが、保険が適用されることでその3割負担、約2,000円で購入できます。
これに加え、病院によっては初診料や再診料、指導料などが別途かかる場合もあるので、費用については病院に確認しましょう。
PMSにピルが効かないときはどうする?
低用量ピルを飲み続けることで、PMSの症状が軽くなることが期待できますが、効果の現れ方には個人差があります。
婦人科で低用量ピルを処方されて、何ヶ月か使ってみてもPMSが改善されないと感じたときは、シートの途中で飲むのをやめたりせず、まずはかかりつけの医師に相談しましょう。
低用量ピル以外では、漢方薬がPMSの症状を緩和する可能性があります。個人の体質や症状によって効果のある漢方薬は異なるので、最初は婦人科か、漢方医のいる薬局で相談してみると良いでしょう。
また、PMSに効果があるとしている市販薬もあります。薬剤師や登録販売者に相談のうえ、こうした市販薬を使うのも一つの方法ですよ。
そのほか、ビタミンB6・ビタミンE・カルシウムなどの栄養素を含むサプリメントなども、PMSの症状緩和に役立つ可能性があります(※3)。
PMSに悩んだらピルも選択肢のひとつ
避妊目的で低用量ピルを服用することで、PMSの症状緩和も期待できます。PMSに加えて月経困難症もある人は、毎月かかる費用や副作用の可能性なども考慮したうえで、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤の処方について婦人科で相談してみるのも良いかもしれません。
ピルが効かない、もしくはピルを飲むことに抵抗があるという人は、先述のとおり漢方薬や市販薬、サプリメントなど自分に合った方法を見つけていけるといいですね。