悩める新小1の保護者が知っておくべき、小学校との上手な付き合い方とは?

小学校は何から何まで保育園・幼稚園と勝手が違います。そのせいもあって、新1年生のお子さんを持つママ・パパの中には、小学校とどのように関わっていけばいいのかわからず、戸惑っている人もいるでしょう。

そこで今回は「小学校との上手な付き合い方」をご紹介します。

お話をうかがったのは、児童の自主性を引き出す教育手法が注目を浴びて各種メディアで活躍中の「沼田晶弘」先生です。


沼田晶弘

沼田晶弘

小学校教諭


東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。

小学校と保育園・幼稚園はまったく別物

小学校 教室

ーー小学校と上手に付き合う上で、保護者が理解しておくべきことはありますか?

学校は「学校」であって、保育園でも幼稚園でもない、ということはわかっておいてほしいです。

ーーどういうことでしょうか?

保育園・幼稚園ってめちゃくちゃサービスがいいですよね。

先生と親御さんが毎日朝と夕方、2回も顔を合わせます。「今日お子さんはこんなことしました」「こんな様子でした」と教えてもらえます。さらに、家や園での様子を共有するために連絡帳でのやりとりが毎日あります。

小学校には、そういったものはありません。学校であった出来事や必要な情報は、すべて子どもを介して知る必要があります。

だから保育園や幼稚園と同じつもりでいると、学校でのお子さんの様子がまったくわからなかったり、知りたい情報が入ってこなくて戸惑うと思います。

出所不明の話を信じないで

噂話

ーーたしかに…。私の子どもも今年小学生になったので、それは実感しています。

新1年生の親御さんは不安になりますよね。

情報が入ってこないからこそ意識してほしいことがあります。「不確かな情報に振り回されない」ということです。

たとえば、ゆとり教育の例として語られることの多い「ゆとり世代の運動会は手を繋ぎながらゴールした」という話。

運動できない子の親から、「ビリになる子がかわいそうだから」というクレームがあって始まったと言われています。

でも、教育にそれなりに長く携わり、全国各地に知り合いの小学校の先生がいるボクでさえ、そんな場面を一度も見たことありませんし、実際に行われているという話を聞いたこともありません。

どこかの小学校でそのようなことがあったのかもしれませんが、あったとしてもごくわずかでしょう。それなのに、まるで多くの小学校で手繋ぎゴールが行われていたかのように語られているんです。

小学校の現場では、このような大小さまざまな真意不明の噂話や都市伝説のような情報が出回ることがあります。それに踊らされてしまうと、親御さんも先生も疲弊してしまいます。

子どもが学校の話をしなくなるのは当たり前

小学生 男の子

ーー何が正しいのかわからない中で噂話に振り回されないようにするのは、なかなか難しい気がするのですが、どうすればいいのでしょうか?

お子さんと学校についてよく話すことが大事です。

学校のことを話すのが当たり前になれば、自然と学校での様子や必要な情報がわかるようになるし、噂話に振り回されることもなくなりますよ。

ただ、入学してからしばらく経つと学校についての会話が減ってきます。でもそれは当然です。親に話したくなるほど刺激的なことがずっと続くなんてありえません。

ボクのクラスの子も、4〜5月までは毎日いろんなことを家で話していたのに、それを過ぎるとだんだん話さなくなるようです。

「メリハリ」をつけて学校の話をしよう

親子 会話

ーー子どもが学校の話をしてくれなくなったら、どうしたらいいんでしょう…。聞き方を変える、とかですか?

いや、そもそも毎回詳しく聞き出そうとするのがおかしいんですよ。

たとえば会社から帰ってきたパートナーが毎日毎日「今日、何してた?」と聞いてきたら、なんと答えますか?

初めは詳しく答えていたとしても、誰だってしばらくしたら「普通だったよ」とか「いつも通りだった」と答えるようになると思いませんか。

それなのに、多くの親御さんは子どもには常に詳しい報告を求めます。おかしいですよね?

子どもと学校の話はすべきだけども、毎回毎回詳しく聞き出すのではなく、メリハリをつけて会話するのがポイントだと思います。

通知表の評価に納得できない人の特徴とは?

通知表

ーーでは次に通知表の評価について教えてください。書かれている評価に対して疑問や不満があった場合はどうしたらいいのでしょうか?

学校での様子がわかりにくいからこそ、通知表の評価や書かれた先生のコメントは気になりますよね。もちろん疑問に思うことがあれば、ぜひ連絡帳などで質問してください。

ただ経験上、通知表に対して疑問を持つ人というのは、お子さんと学校のことをしっかり話せていないのかなと感じることもあります。

「もう少し」という評価をもらえば、「なんで!?」と思う人もいるかもしれません。でも、子どもの書くノートや提出する宿題なんかを見ていれば、その理由は自然とわかると思います。

逆にいうと、小学校の通知表というのはそういうところからわかる程度の評価でしかないのです。

それと、通知表というのは成績表ではありません。

仮に体育が得意な子だったとしても、今回はちょっと手を抜いていて積極性や協調性が感じられないなと先生が感じたら、評価を「良い」ではなく「普通」にするといったこともあります。

小学校の通知表は、「道しるべ」的なものだと思ってください。

小学校は「がんばる」ところ

プリント 九九

ーー通知表の評価には「もっとがんばってほしい」という先生の気持ちも込められているんですね。

そうなんです。まさしく小学校というのは、「がんばる」必要がある場所なんですよ。

幼稚園・保育園までは、元気に遊んで、しっかりご飯を食べているだけで問題ありません。でも、小学生になるとがんばらなきゃいけないこと、練習しなきゃいけないことが出てきます。

その最たるものが小2で習うかけ算の九九です。あれは練習しないとできない。そこに気づける子は練習するし、気づけない子は練習しない。だから差が開いていくんですね。

ただ、小学校はそもそも「がんばってもできないこと」を子どもに課したりしません。誰でもがんばればできるから、九九をやらせるんです。

その前提を踏まえた上で、通知表に書かれた評価を受け取ってもらえたらと思います。

それでも評価に不満や疑問があるなら、先ほど言ったように、お子さんと話してみてください。そうすれば、なぜ算数が「もう少し」だったのか、体育が「良い」ではなく「普通」だったのかわかるはずです。

「疑わない人」がモンスターペアレントになる

通話 女性

ーー通知表に限らず、気になったことを先生に伝えたいけど、しょっちゅう伝えていたらモンスターペアレントだと思われてしまわないか心配になる保護者もいると思います。モンスターペアレントとそうでない保護者の違いはどこにあると思いますか?

これまでお付き合いさせていただいた親御さんの中で、モンスターペアレントだと思った人は1人もいないですね。

しかし見聞きした限りでは、自分が正しいと思っている人、子どもの話を鵜呑みにする人はモンスターペアレントになりやすいという印象があります。

たとえば、お子さんが「友達に殴られた」と言ってきたら、子どもの話を鵜呑みにしたり、自分の判断が100%正しいと考えて学校に連絡してくる人です。

実際にお子さんがそう言ったとしても、詳しく話を聞いてみると、子どもの勘違いだったり、嘘をついていたりすることもあります。

小学生は記憶があいまいなことも多いし、仲間を守ろうとする気持ちや自分を良く見せたいという気持ちもありますから。

モンスターペアレント化を防ぐ2つの方法

小学校

ーーモンスターペアレントにならないようにするには、どうすればいいでしょうか?

繰り返しますが、まずはお子さんと学校の話をよくするのが大事だと思います。

その際気をつけて欲しいことが2つあります。

1つ目は、ネガティブなことを聞かされたとしても、まずは冷静に受け止めて欲しいということ。子どもの話を鵜呑みにせず、できるだけ客観的にとらえるのが大事かなと思います。

2つ目は、絶対に怒ったり叱ったりしないこと。学校の話をした結果、親に叱られたとなると子どもも親の前では本当の話をしづらくなってしまいます。テストの点数が悪すぎて怒られた子どもは、テストがあったことすら話さなくなりますから。

先生と信頼関係を作るのも大事だと思います。先生も親御さんとは信頼関係を築きたいんです。

「なるべくなら学校に行きたくない」「先生とも会話したくない」という親御さんもいると思うのですが、子どものためだと思って保護者会や個人面談の際に積極的にコミュニケーションをとってもらいたいです。

もちろん先生と親御さんにも相性はあるので、なかにはコミュニケーションが取りづらい先生も出てくると思います。

でもそれって、学校の外では当たり前じゃないですか。付き合いやすい上司や同僚ばかりじゃないし、仲のいいご近所さんばかりじゃない。それでも上手くやっていく必要があります。

子どもにとって最良な「小学校との付き合い方」

上履き 下駄箱 小学校

ーー相性の良くない先生ともうまく付き合っていくコツはありますか?

お互いをリスペクトすることではないでしょうか。

たとえば、先生へクレームを入れるときでも、「家庭と学校で手をとって共に良くしていきましょう」というスタンスであれば良い方向に転がっていきます。しかし先生をバカにしたようなスタンスだったり喧嘩腰だったりすると、物事が解決していかなくなります。

しかもそういう悪い雰囲気は意外と子どもも感じ取って親に感化されていくので、話がよけいややこしくなりがちです。

もちろん先生が致命的な間違いを犯していたり、実害を被ったりしたときははっきりとクレームを入れた方がいいですよ。

でもちょっとしたトラブルやミス程度であれば、「なんかこの先生面白いね」とお子さんと笑って盛り上がったり、「この先生はおっちょこちょいだから、我が家はこう対応しよう」といった形でフォローしてもらえたらと思います。

言ってみれば、先生と家庭はチームみたいなものなんです。お子さんを健全に育てるというゴールに向かって、お互いをフォローしあう仲間。

そう思ってもらえたほうが、小学校生活がより良いものになるはずだし、子どもにとっても一番いいはずです。

年長・小学生の親向けアプリ
「ninaru小学生」

ninaru小学生アイコン

新小1(年長)~小学生に向けた毎日のアドバイス、お子さんの学習習熟度がわかるチェック機能などが備わるアプリ「ninaru小学生」。

すべての機能が無料でご利用いただけます。ぜひダウンロードして使ってみてくださいね。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう