「やさしい心」はどう育てる?感情表現や子どもへの言葉がけがポイント

「思いやりのある、やさしい子になって欲しい」と願うママは多いもの。どうしたら、子どもにやさしい心が育ち、人に対して思いやりを持てるのでしょう?

親子のコミュニケーションのアドバイスもしている菅原裕子先生にお話を伺いました。

菅原裕子先生

菅原裕子先生

NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事。(有)ワイズコミュニケーション代表取締役。 子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム <ハートフルコミュニケーション> を開発。講演会やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る。著書は『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)ほか。

愛されている実感があるからやさしくなれる

笑顔 子ども

やさしさというものは、本来、人として誰もが持ってるもの。それをストレートに表せる気質かそうでないかの違いはありますが、すべての人に備わっている感情です。

人は、自分が愛されて満たされていないと、人にやさしくすることが難しくなります。自分のことが大切だと思える『自己肯定感』は、生きていく上で心の支えとなる基本。

愛されること、自分を受け入れられることで、「自分が好き」という感覚が育っていきます。この感情があるからこそ、人に対しても同じような思いを持つことができ、やさしさを表現できるようになります。

子どもにとってもこれは同じ。ママやパパから愛されているという実感が、心を落ち着かせ、安心感を与え、心にやさしさが育まれるベースとなります。

感情を押さえ込ませない、叱り続けない

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子どもが転んでしまった時に、「大丈夫、痛くないよ。がまん!」と言葉をかけるママは多いでしょう。

人前ではあまり感情表現しないという国民性もあり、泣いている子どもに対して「泣かないのよ」と、感情を押さえ込ませようとしがち。

こんな親の言葉に対して、子どもは「痛い」という気持ちを「受け止められていない」と感じてまうこともあります。

どんな感情も否定せず、まずは受け止めてあげましょう

痛がっていたら、「痛いね~」「泣きたいね~」でいいのです。自分の気持ちをちゃんと受け止めてもらえているという 安心感が育まれます。

赤ちゃん時代は、抱っこしたり、目線を合わせたり、お世話をすることで愛情を伝えられますが、ハイハイしたり一人歩きができる頃になると、危険から守るために親は「ダメよ」を連発してしまいます。

さらに成長し、自分の意志で行動するようになってくると、きちんとしつけようと、「靴を並べなさい」「遊んだら片づけなさい」などと指示したり、お友だちに迷惑をかけないようにと「叩いたらダメ」「あやまりなさい」と叱ったり。

日常的な注意やしつけは命令口調になりやすく、子どもが指示通りに動かないと「なんでちゃんとできないの!」とママのイライラがピークに達することも…。

「わが子のため」と思ってしていることですが、命令されたり叱られてばかりが続くと、子どもは親から愛されていないと感じてしまうことがあります。

こんな場面で、こんなひと言を
感じていることを言葉で表現してあげよう!

(アイキャッチ)赤ちゃん ママ 親子 笑顔

● お皿に出したお菓子を1つ、ママに「どうぞ」と差し出してくれた時に、ママの気持ちをひと言

→「おいしそう、ありがとう!○○ちゃん、やさしいね」
「どうぞ」「ありがとう」のやりとりが面白くなってきた子は、何度も繰り返します。おもちゃを貸してくれた時も同じ。自分がした行為によって相手がどう感じるかを理解していきます。

● 帰って来たパパを、満面の笑みでお出迎えした赤ちゃん。抱っこされて喜んでいる時に、子どもの思いをひと言。

→「パパが帰って来て、うれしいね!」
うれしい、楽しい、幸せという喜びの感情は、笑顔や笑い声としてストレートに表現してくれます。その都度、「うれしいね」「楽しいね」と言葉にしてあげましょう。

● 遊んでいたおもちゃが壊れてしまった時に、子どもの思いをひと言。

→「壊れちゃったね。遊べなくなって悲しいね。おもちゃ痛そうだね」
自分が乱暴に扱ったことでおもちゃが壊れたという結果に「困った、悲しい」という感情を表現することで、「次は大切に扱おう」という思いにつながります。

● ころんでしまって、子どもが泣き出した時(何か痛い目にあった時)に、子どもの思いをひと言。

→「ころんじゃって、痛かったね」
まず、痛かった気持ちを受け止めて、言葉にしてあげることが大切。その上で、「痛いの痛いの飛んでけ~!」などと、と言ってあげるといいですね。

きょうだいの場合はどうする?

きょうだい 遊ぶ 写真

きょうだい関係において、「上の子が下の子にやさしくない」と言うママは少なくありません。

下の子が生まれたばかりという場合、ママが赤ちゃんのお世話に一生懸命になってしまうと、上の子はママをとられてしまった状況に。できるだけ上の子に優先的に関わってあげましょう。

自分がママに愛されている実感があると、子どもは自分がしてもらったように、下の子にやさしさを表現できます。

✕ NGなひとこと

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ。ガマンしてね」
「もう大きいんだから、一人でできるでしょ」

心が不安定だと、ガマンしたり頑張れなくなったりします。
上の子の心を満たす方を優先して。

◯ OKなひとこと

「おむつ持ってきてくれて助かるな。ありがとう」
「あやしてくれて、赤ちゃんうれしそうだね」

手伝ってくれてうれしかったことを具体的な言葉で子どもに伝えましょう。

まず親が自分の感情を素直に表現しよう

赤ちゃん ママ 遊び

親自身が、自分の感情をきちんと見つめられていないことがあります。

日常、子どもと関わる中で、無意識に怒りが先に出てしまっていないでしょうか?

例えば、愛用していたものを、子どもが壊してしまったとき。反射的にムカッときて「何やってるの!」と怒鳴ってしまっていませんか。

怒りをいきなり子どもに伝えると、反発したり、自分を守るために「ボクじゃない」とウソを言ってしまうこともあります。

わざとやったのではなくて、そうなってしまった理由もあるのにいきなり怒られると、子どもが素直にあやまれないこともあるでしょう。

でもこのときに、ママ自身の気持ちを冷静に考えてみましょう。「怒る」感情の前に、「大事なものが壊れてしまって“悲しい”」という感情がありませんか。

「大事にしてたのに壊れてしまって、悲しいな」と素直に気持ちを伝えると、子どももママの悲しい感情を受け取り、「ごめんなさい」という言葉が出やすくなるでしょう。

感情を言葉で教えることで
自分や人の思いを知っていく

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人にやさしくするには、まず人の思いを感じ取れることが大切

「これをしてあげると、この人は助かるな」とか「これをしてあげると、この人はうれしいんだな」という相手の思いをキャッチできる感受性が育っていないと、相手にやさしくすることは難しいものです。

人の思いを受け止められる「感受性」は、日常のさまざまな場面で、感じている心を伝えていくことで育まれていきます。

例えば、お友だちが遊んでいるおもちゃを貸してもらえたときに、「おもちゃを貸してもらえて、うれしいね」と言葉にしてあげると、子どもは「これがうれしい感情なんだ」と理解していきます。

泣いている友だちがいたら「ブランコでもっと遊びたくて、泣いてるんだね」などと、ほかの子の気持ちも伝えてあげると、相手の気持ちと行動がつながっていきます。

日常の会話を大切にしよう

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パパとの間、家族の間でもそうですが、日常のいろいろなシーンでの会話を大切にしましょう。いつもやっている当たり前のことには、親子や夫婦間では感謝の言葉や、気持ちを伝えないことも多いのではないでしょうか。

子どもがしてくれたことに対して、あるいは夫婦間でも、「ありがとう」「助かるな」などと表現することはもちろん、楽しい気持ちや悲しい気持ちなども、きちんと言葉で相手に伝えるようにしましょう。

子どもが何かしてくれた時に、「うれしいな。ありがとう」と伝えることで、子どもは「自分がしたことが、人を喜ばせた」ことを学習します。

感謝を伝える時は、「うれしい」という喜びの感情を伝えることがポイント。「いい子だね」などの言葉でほめられても、相手が何を感じたのか子どもには伝わりません。

ママやパパから、一緒に暮らすきょうだい、おじいちゃんやおばあちゃんからも「うれしい。助かるわ」「ありがとう。○○ちゃん、やさしいね」と感謝されるたびに、子どもの心に“誰かの役に立つ喜び”や“人にやさしくすると自分もうれしい”という感情が根づいていくでしょう。

取材・文/中野洋子
出典:miku 23号 2011年冬号
記事提供:絵本ナビ編集部
※掲載されている情報は2010年12月25日当時のものです。一部加筆修正をしています。

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