【乳幼児期のオーラルケア】生活習慣が子どもの口と歯の健康を守る!

「子どもの歯をむし歯にしたくない!」というママやパパは多いのではないでしょうか。しかし、むし歯にならなければいいということではありません。早寝早起き、生活リズムを整えることが、口と歯を健康に保つためにも大切だといいます。小児歯科医の田中英一先生に伺いました。

田中英一先生

田中英一先生

田中歯科クリニック小児歯科(東京都中野区)院長。日本小児歯科学会副理事長、日本保育保健協議会理事、保育園や幼稚園の園医をつとめる。子どもの歯と心を考えることで定評がある。共著に『子どもの食の育て方』『お母さんの疑問にこたえるすこやかな口 元気な子ども』(医歯薬出版)ほか。

生活リズムを整えることが
口と歯の健康につながる

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「むし歯のない子に育てたい!」「かみ合わせがきれいになって欲しい!」と思っているパパママは多いのではないでしょうか。

しかし、口と歯の健康は、むし歯がない・かみ合わせがきれい、ということだけではありません。

たとえむし歯ができたとしても、ちゃんと治療したり、かみ合わせにずれがあっても歯並びに合った歯磨きをていねいにしたり、子どもたちが自分に合ったケアを身につけて、おいしく食事をし、楽しく会話したりできることが大切です。

子どもの口の中をのぞくと、子どもの生活環境や生活習慣が見えてくることがあります。

生活リズムが整っている子は、衛生習慣も身についている子が多いようです。

さらに自分から手洗いする子は、自分から歯磨きする子が多いという調査結果もあります。

早起き&朝ご飯で1日を始めよう

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朝早起きして夜はしっかり眠る、朝ご飯を食べて日中は活動的に過ごし、おなかがすいた感覚を感じたところで、昼食や夕食を食べる。

食事をしたら歯を磨き、外から帰ったら手洗いうがいをする、夜は入浴して体をきれいにして、歯磨きして寝る。

1日の生活を整えていくと、生活の中に歯磨きや手洗いうがいが位置付けられ、それが習慣になっていきます。

歯磨きの習慣や食生活の習慣、生活リズムを整えることが、自分の体を健康に保ち、口と歯の健康にもつながっていくのです。

生活リズムの乱れで起こる悪循環

兄弟 喧嘩

現在、30代男性の約3割、20代女性の約25%が朝ご飯を食べていない(2007年厚生労働省国民健康・栄養調査)そうです。

また、2012年度に行われた文部科学省の調査によると、小学6年生で9人に1人、中学3年生になると6人に1人の割合で朝食を食べないことがあるという結果が出ています。

脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、脳はブドウ糖をためておくことができないため、朝食を食べないと脳の働きが悪くなり、体温も上がらないため活発に活動できなくなります。

午前中ボーっとしていたり、また食生活が乱れて栄養が不足しているとイライラしやすい傾向があるとも言われています。

朝ご飯は1日の始まりです。夜遅くまで起きていれば、朝はなかなか起きられません。

幼稚園や保育園に行く時間ぎりぎりまで寝ているということになれば、朝ご飯を簡単に済ませたり、食べなかったりするでしょう。顔を洗ったり歯を磨く時間もゆっくりとれません。排便を規則的にする習慣も身に付きにくくなります。

また、登園時間ぎりぎりになって、子どもを叱りつけてばかりということにもなりがちで、悪循環です。

しっかり楽しく食べることが
むし歯予防につながっている

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「朝は早起きして、3食を規則正しく食べる」ということは、しっかり食べることにつながります。

しっかり食べていないと、すぐにおなかがすいてぐずりが強くなり、そのたびにおやつをあげるなどの傾向にもなりかねません。

しっかり食べると、しっかり活動できます。口の中に食べ物が入っている時間が少なくなり、よく噛んで食べると唾液の分泌が促されます。口の中がきれいになり、むし歯を予防することができるのです。

甘いお菓子やジュースなどは時々にして、食べたらお水やお茶を飲んで口の中の糖分を流すことも大切です。

朝ご飯をしっかり食べると、顔の筋肉が動き、脳細胞も刺激されて活性化します。朝ご飯を食べさせた方がいいけれど、親が忙しく子どもだけで食事をとらせるというご家庭もあると思いますが、一人で食べると食が進まないことも少なくありません。

食卓は家族の距離が近くなるコミュニケーションの場でもあります。楽しくおいしく食べることは、よく噛み、食が進むことにもつながります。

パパの帰りが遅い場合は朝食だけでも、または週に何度かの夕食だけでも、できるだけ家族で一緒に食卓を囲めるように心がけましょう。

口と歯の健康は、生活習慣と密接なかかわりがあります。親子で生活リズムを整え、よく眠り日中は活動的に過ごす。家族一緒の食事を心がけることが、家族みんなの口と歯を守ることにつながります。

コラムイオン飲料やスポーツ飲料を
水代わりにしないで

イオン飲料やスポーツ飲料を赤ちゃんのうちから飲ませたり、風邪で熱が出たときにイオン飲料をすすめられて飲ませてから水を飲まなくなったという声を聞くことがあります。

イオン飲料やスポーツ飲料には、ナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれています。これは脱水症状を起こしたときなどの点滴と同じような成分のため、下痢や嘔吐のときや大量の汗をかいたときなどに与えると効果的なものです。

ただし、イオン飲料やスポーツ飲料には糖分も含まれているため、症状が改善した後にも与え続けると、むし歯ができやすくなります

また普通の食事をしている子どもの与えると電解質が多いためのどが渇きやすくなり、常に飲み続けるというパターンになりがちです。

糖分や電解質の過剰摂取となり、食欲不振や肥満の原因になるなど、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

イオン飲料やスポーツ飲料は必要な時にだけ与え、水代わりに与えるのは避けましょう。

出典:miku 50号 2017年秋冬号
絵本ナビ編集部
※掲載されている情報は2017年12月25日当時のものです。一部加筆修正をしています。

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