最近は独自の教育を行う保育園や幼稚園も多くなってきて、どんな教育方針で育てようか迷ってしまうママやパパも少なくありません。そんな中、最近注目されている「ヨコミネ式」をご存知でしょうか。今回はその創始者である横峯先生に、ヨコミネ式とは何かや、家庭でも実践できるテクニックなどを伺いました。
ヨコミネ式とは?
ヨコミネ式とは、「すべての子どもが天才である。ダメな子なんて一人もいない。」という理念に基づき、鹿児島県志布志市の保育園からスタートした教育法です。
子供が自立するための「心の力」、「学ぶ力」、「体の力」を育てるようなカリキュラムが組まれており、ヨコミネ式を取り入れた保育園では、園児全員が逆立ちで歩けるようになる、絶対音感が身につく、小学校6年生レベルの読み書きができるようになるなど、驚異的な成長を見せる子供が多くいます。
テレビなどで取り上げられたことで全国的に注目を集め、現在は日本全国にヨコミネ式を取り入れた保育園や幼稚園が誕生するだけでなく、育児の相談に志布志を訪れる親子もたくさんいるそうです。
ヨコミネ式の目標は、子供の自立
そんなヨコミネ式では、子育ての目標を「子供の自立」であると考えています。そのために必要とされるのが「心の力」「学ぶ力」「体の力」という3つの力。具体的にはどんな力なんでしょうか。
心の力
「心の力」とは、自ら困難に立ち向かっていける、社会に出て自立して自分で生き抜けるような強い心の力です。
ヨコミネ式では、子供の「少し難しいことをやりたがる」「競争したがる」気持ちをくすぐって、子供たちにあった困難に立ち向かわせます。卒園するまでには自分の将来をしっかり語れるようになるほどです。
学ぶ力
「学ぶ力」とは自ら学んでいく力のこと。「学ぶとできる、できると楽しくなる、楽しくなると飽きる、飽きると次の難しいことにチャレンジしたくなる」というサイクルで、誰かに言われた学びではなく、学ぶこと自体が楽しくなります。
ヨコミネ式の卒園生は、小学校でもどんどん自ら学べるようになるそうです。
体の力
3番目の「体の力」とはその名のとおり、体力や柔軟性といった、体に関する力のこと。心の力や学ぶ力の基礎になるもので、体の力がつくと勉強などにもさらに集中して取り組むことができるようになります。
また運動神経の基礎は6歳頃までに固まるともいわれているので、幼児期から運動に取り組むことで基礎的な運動神経も身につけられます。
ヨコミネ式の保育園・幼稚園ではどのような教育がされているの?
それでは、ヨコミネ式が導入されている保育園や幼稚園では、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。代表的なカリキュラム例をご紹介します。
ヨコミネ式の基本は「自学自習」スタイル
ヨコミネ式では、「教える」ということを行いません。子供たちにはそれぞれに教材を与え、自分のペースでそれに取り組む、「自学自習」のスタイルをとっています。
子供たちは分からないことを自ら先生に聞きに来て、あとは集中してひたすら勉強や練習に取り組んでいます。そして自分で「できた!」という楽しさから、さらに集中して取り組み、自然とぐんぐん成長していきます。
読み・書き・計算
ヨコミネ式で大切にしている「子供の自立」という目標に向かって、社会に出て絶対に必要な「読み・書き・計算」にしっかり取り組ませます。
ヨコミネ式では、幼児でも集中力が保てるように、それぞれ20分ずつ、合計1時間を毎日この「読み・書き・計算」の時間に充て、学習習慣にも気をつけています。
運動
ヨコミネ式といえば印象的なのが、頭に血を巡らせ、脳を活性化させるためにも効果的といわれる「逆立ち歩き」。遅い・早いはありますが、練習すればどの子供も必ずできるようになります。
他にも跳び箱や側転、水泳など基本的な運動を行ったり、力の使い方を学ぶために男の子はルールをしっかり守ってレスリングにも挑戦したりもします。
他にも、音楽を学んで絶対音感が身につく子供がいたりと、ヨコミネ式の保育園・幼稚園では様々な取り組みがされています。しかし、ヨコミネ式の園に通いたいと思っても、場所や環境によってはなかなか通えないというママも多いですよね。
そこで今回は、ヨコミネ式の創始者である横峯先生に、家でも実践できるヨコミネ式の教育法を教えていただきました。
家庭で実践できる!ヨコミネ式の教育法
横峯 吉文先生
3つの保育園と、学童施設などの理事長を務める横峯先生。30年以上現場に立って子供たちを見守ってきた経験をもとに、家でもできるヨコミネ式の方法を語っていただきました。
ー ヨコミネ式の園に通いたいけど通えない!というママが多いのですが、家庭でできることはありますか?
横峯先生:最近は祖父母も近くにいませんし、1人で育児に悩んでしまっているお母さんが多いですよね。だからまず、「細かく悩まずに少しくらい適当にしてみて!」と言いたいです(笑)。甘えたり、泣いたりしている子供と向き合って悩んでいるお母さんによく会いますが、「無視する」「突き放す」というテクニックを家庭で使ってみて、と伝えていますよ。
私が経営している保育園では、泣いている子供がいても声をかけるな、と保育士に指導しています。例えば先日、跳び箱がなかなか飛べなくて泣いている園児がいました。しかし遠くで見て声をかけないようにすると、子供は自分で泣き止んで、ひたすら練習しはじめたんです。
子供たちはみんな天才。大人が手を貸さなくても、自分で立ち上がることができるんですね。
自分の思い通りにならなくて、駄々をこねるときこそ大きく成長するチャンスです。お母さんがかまうと、その成長のチャンスを奪ってしまうことにもなるんですよ。だから、テクニックとして、突き放してみることも、ときには大切です。子供が自分で乗り越えると、その分きっと力が身につきますよ。
褒めるのではなく認めてあげる
ー 自分で乗り越えられたときは、どのような声をかけてあげればいいですか?
横峯先生:できたときは、きちんと認めてあげると良いでしょう。大事なのは、「褒める」ではなく「認める」ということ。うちの保育園では、よくできたら「100点、合格!」と言ってあげています。逆にできなかったら、「30点、やり直し!」と短く言ってやり直しをさせます。
とにかく、手を取り足を取り教えてあげるのではなく、自分でやり直させることが大切。子供が自分で考え、そして最後までやりきる。そんな経験が「自立した子供を育てる」上で大切なんです。
とにかく、読み・書き・計算
ー ヨコミネ式のなかでも、家庭では特にどんなことに取り組ませるといいですか?
横峯先生:とにかく、基礎の基礎である「読み・書き・計算」に取り組むのがおすすめです。勉強が嫌いな子供というのは、「勉強ができない」という意識をもっていることが多いのです。逆に、小学校に入る前に、「できる!」という気持ちを積み重ねておけば、卒園してもずっと勉強に苦手意識を持たずに済みますよ。
「できる!」を積み重ねるためには、「少し難しいことに取り組ませる」という法則を使ってください。例えば文字の練習をするときは「あ」から始めがちですが、別に「あ」から始める必要はありませんよね。
うちの保育園では、最初は「一」からスタート。そして書き順が少ない簡単な文字、しかもカタカナを先に学んでいくようにしています。「あ」は書き順もあるし、縦棒も横棒も曲線もありますし、最後でいいくらいです(笑)。
小さな「できる!」が積みあがっていけば、子供たちはどんどん勉強が好きになって、次第に難しいことにもチャレンジしてくれますよ。
教えずに、自分で学ぶ力を育む
ー 「読み・書き・計算」をするときは、やはりママが教えてあげたほうが良いのでしょうか?
横峯先生:ヨコミネ式では基本的に、自学自習を推奨しています。子供が自分で考えて答えをみつけることで、自ら学ぶ力を育んであげるということですね。
なのでお母さんは、子供が「難しいから教えて!」といったときだけヒントをあげて、あとは見守っているだけで良いのではないでしょうか。子供はみんな天才なので、時間がかかったとしても必ず自分で解決できるんですよ。
例えば、絵本を子供に読み聞かせているというお母さんも多いかもしれませんが、その役割を逆にしてみるのはどうでしょう?読んであげるのではなく、簡単な絵本を子供がお母さんに読んで聞かせるのです。子供は自分で読む練習にもなるし、お母さんは家事をしながらでも聞けて楽だし(笑)、お互いにとって良い取り組みになると思いますよ。
そして、子供ができないと泣いたり、甘えたりしてきたときは、もう一度「突き放す」というテクニックを思い出してみてくださいね。お母さんは適当でいいんです(笑)。子供にとってお母さんは、世界で一番大切な存在。突き放したとしても、そこにあるお母さんの愛情はきちんと伝わっていますよ。
子供が自分で乗り越えるチャンスを作って、見守ってあげていてくださいね。
ヨコミネ式教育法で、子供の自立をサポートしよう
子育ての目標を「子供の自立」とし、子供が自ら学んだり、経験したりすることを大切にするヨコミネ式。まずは取り入れられそうなところから、少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
子供たちがもともと持っていた力が開花され、ママもびっくりするかもしれませんよ。