養子縁組の条件や手続き・特別養子縁組とは?養親になる心構えとは

子供を望んでいても妊娠・出産に至らない人たちのなかには、不妊治療を始めたり続けたりするのではなく、養子縁組で子供を迎える夫婦もいます。養子縁組には種類があり、それぞれ細かい条件が定められています。今回は、養子縁組の種類や条件、手続きについて、特別養子縁組のあっせん団体「命をつなぐゆりかご」の代表である大羽賀秀夫さんのインタビューとあわせてご紹介します。

養子縁組には種類があるの?違いは?

手 親子 子供 親

養子縁組には、「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2種類があります。この2つの一番の違いは、特別養子縁組では親権が生みの親から育ての親に移り、戸籍上も実子となることです。普通養子縁組では、親権は生みの親に残り、戸籍上は養子や養女と記載されます。

新しい家族として子供を迎える方法には、養子縁組のほかに「里親制度」もあります。下記に、「特別養子縁組」「普通養子縁組」「里親制度」の違いをご紹介します(※1,2,3)。

特別養子縁組・普通養子縁組・里親制度の違い

特別養子縁組 普通養子縁組 里親制度
養子となる子供の年齢 特別養子縁組が成立する時点で6歳未満(6歳以前より養育されている場合に限り8歳未満) 年齢制限なし(養親よりも年下であること) 原則として18歳未満
養親の年齢 夫婦の一方が25歳以上(もう一方は20歳以上でも可) 成年であること 年齢の条件はなし
成立条件 家庭裁判所による審判 養親と養子の同意により成立 里子になる親権者の合意
親権 実親から養親に移る(法律上、実親との関係は断絶) 実親に残る(法律上の親子関係も残る) 実親に残る(法律上の親子関係も残る)
戸籍の表記 長男・長女 養子・養女 縁故者または同居人
離縁 原則、認められない 可能 途中で実親の元に戻るか18歳で自立
国からの補助金 なし なし 里親手当86,000円/月と養育費

特別養子縁組とは?

特別養子縁組 オリジナル eversense

ここ数年で特別養子縁組が注目されるようになり、あっせんする民間団体も増えています。

特別養子縁組の一番の目的は、望まない妊娠や貧困といった理由から、生まれても親の元で育つことができない子供を、他の家庭に迎えて実子として育てることです。

婿養子に代表されるような家系の維持や相続のための養子縁組は普通養子縁組として行われ、戸籍上は「養子」「養女」と記されます。一方で、特別養子縁組は実子と同じ扱いになります。

そのため、不妊などの理由で妊娠・出産が難しい夫婦をはじめ、すでに子供がいるけれど新たに子供が欲しいと願う夫婦などが、特別養子縁組を選択して新しい家族を迎えています。

特別養子縁組のマッチングとは?

現在、日本で特別養子縁組のあっせんを行っているのは、児童相談所と民間のあっせん団体です。あっせん団体によって、子供を迎えたい夫婦(育ての親)と子供を育てられない親(生みの親)とのマッチングが行われます。

生みの親は妊娠中からあっせん団体に相談をすることも多く、赤ちゃんが生まれてすぐ、または生まれる直前にマッチングによって選ばれた夫婦に連絡がいき、産後すぐの赤ちゃんを迎えることもあります。

養子縁組の条件は?

女性 ノート メモ 記録 本

特別養子縁組で子供を迎えるためには、いくつかの条件をクリアしなくてはいけません。

養親になるためには、「配偶者がいなくてはいけない」「夫婦の一方が25歳に達していなくてはいけない」などの条件が民法によって決められていますが、それ以外にもあっせん団体によって、様々な条件が定められています。

特別養子縁組の条件の例

● 育ての親となる夫婦のどちらかは仕事をやめて養育に専念すること
● 年収は◯◯円以上であること
● 婚姻して○年が経っていること
● 近親者の同意や協力があること
● 住居が広いなどの環境がいいこと
● 実子がいないこと

上記の条件は法律上定められたものではなく、あっせんしている団体によって異なります。後にご紹介する社団法人「命をつなぐゆりかご」では、こういった条件を前提にせずに特別養子縁組を進めています。

養子縁組の手続きは?特別養子縁組はどうやって成立するの?

数字 1・2・3 ステップ

ここでは、民間あっせん団体を通して特別養子縁組を行うときの主な手続きをご紹介します。

特別養子縁組の手続き方法の例

1. あっせん団体の講座や説明会へ出席
2. あっせん団体による家庭訪問・面談、研修に参加
3. 審査に通ったら子供を迎え入れる準備をして待つ
4. マッチングが成立したら迎え入れ
5. 6ヶ月以上の試験養育期間
6. 家庭裁判所への出廷・面談
7. 裁判所の調査官による家庭訪問
8. 許可後は住居地の役所に特別養子縁組届を提出

登録後、マッチングが成立するまで何年も待つこともあります。また、ある日突然、2日後に生まれる予定の赤ちゃんを迎え入れられるかどうかと連絡が来るといったケースもあるので、いつでも受け入れる準備をしておくことが大切です。

マッチング後は6ヶ月間以上の試験養育期間が与えられ、その状況を考慮して家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定します。

特別養子縁組を希望する夫婦に必要な姿勢とは?

特別養子縁組をする際に夫婦にどんな姿勢が必要になってくるのでしょうか?養親として子供を迎えることを希望する夫婦や望まない妊娠で悩んでいる女性に向けて特別養子縁組をあっせんしている「命をつなぐゆりかご」の代表、大羽賀秀夫さんにお話を伺いました。

一般社団法人「命をつなぐゆりかご」代表大羽賀秀夫さん

大羽賀秀夫さん

多くの子供の命と未来を救うために奔走。3人の特別養子、2人の里子を育てている経験から子育てへの想いも述べてくださいました。

子供の命を救いたい、育てることへの責任

使用不可 命をつなぐゆりかごパンフ

ー はじめに特別養子縁組のマッチングに取り組み始めたきっかけを教えてください。

大羽賀さん:かなり前から里親制度や施設養護の問題には触れていました。ただ、より身近に考えたのは、2年間の不妊治療のなかで私自身に原因があることがわかり、それまで妻にばかり不妊治療の負担をかけていたことに気づいたときですね。

自分たちも養子縁組の形で子供を迎えて実際に子育てを進めるうちに、同じ養子縁組での子育てを頑張る仲間とつながり、次第と活動の幅が広がっていきました。

「命をつなぐゆりかご」は平成24年度から社団法人としてスタートしましたが、実際はもっと昔から個人で相談は受けていて、結果的にこれまで500組くらいの特別養子縁組の成立をお手伝いしてきました。現在も、養子縁組を希望される夫婦への講座や直接の相談、実母へのサポート、そして、子供の命をつなぐことを大切に活動しています。

ー 最初のお子様とはどのように出会われたのですか?

大羽賀さん:当時は本当に情報がなく、あるときテレビで縁組をあっせんしている団体を知り、半ば強引にお願いして生後2ヶ月の男の子に出会いました。それが長男です。そのときの喜びは今でも忘れません。

ただ、私たちに子供を委ねた後、泣き崩れる様にした実母と寄り添う祖母の姿を見かけて…。自分たちの責任と命の重さに改めて気づかされました。

私たちは最初から「親」ではない、子供たちが「親」にしてくれた

ー 5人育てられていると伺いましたが、大変なことはないでしょうか?

大羽賀さん:何も特別なことをしてきたわけではないですが、長男を育てるうちに、兄弟を迎え入れるのは自然の流れでしたね。

今、四男は思春期にも差し掛かって毎日が戦いですよ。でも、家族として衝突もありながら過ごすことで、私たちも「親」として成長してきたんだなと。初めから「親」である人なんかいません。

ー 特別養子縁組の良さとはどういったところにあるのでしょうか?

大羽賀さん:現在、生後すぐからネグレクト状態だった9ヶ月の男の子を一時的にお預かりしています。かなりこわばった状態です。今はだいぶ慣れてきましたが…。それだけショックを受けた子供を受け止めるのは時間もパワーもかかることなんです。

傷ついた経験を消すことはできないけれど、一緒に生活するなかで「それだけではないんだよ」と愛して伝え続けることが大切です。そのためにも、その子供にあった夫婦や家庭を見つけてあげて、一身に愛情を受ける機会を、特別養子縁組を中心に作ってあげたいんです。

子供も人間だから、一人の人間として尊敬する

ー どういったときに「親」として成長させてもらったと感じましたか?

大羽賀さん:私自身、子供との生活すべてを通して親として成長させてくれたと感じていますが、養子縁組で子供を迎え入れたママたちも、一生懸命子供に向き合うことで日々成長しています。

例えば、アミューズメントパークやキャンプを通して目一杯子供と遊んだり、思春期になれば子供の服装や行動が気になって小さなことでも口論になったり、危ないことをしているのではと注意して、それが子供にとっては自立の邪魔に感じて喧嘩したり。一つひとつのやり取りで、私たちも親として学んでいくんですよね。

ごく普通の子を、ごく普通の夫婦が、ごく普通の生活で、ごく普通に育てる

ー そのやりとりを聞いていると、本当に自然な家族なんだという印象を受けました。

大羽賀さん:そうです。この普通のやりとりができること、子供は家族の中で愛情に触れていることが大事だと私は思うんです。特別養子縁組をあっせんしている民間団体によっては子供を望む夫婦に条件を出すところも多くあります。

本当にこういった条件が大切なのか。何か大事なものを失っているようにしか考えられません。私たち「命をつなぐゆりかご」では、こうした条件は求めません。「ごく普通の子を、ごく普通の家庭で、ごく普通の生活で、ごく普通に育てる。」それ以上でもそれ以下でもありません。

特別養子縁組でどんな家族を築きたいのか

ー しかし、ごく普通に育てる、ということも簡単ではないと感じます。どんな姿勢が必要でしょうか?

大羽賀さん:もし養子のことを「可哀想だ」「不幸だ」と思っていたら、それは間違いです。子供もそんな風に思われたら嫌な気持ちになります。ただ、不妊治療を続けてきて「自分の価値はいったいなんなのか」と苦しむ女性は自分への劣等感の裏返しで、実親に育てられない子供を「可哀想」だと思う気持ちもわかります。

今までは産めない状況に追い込まれていたかもしれませんが、あなたはこれからも人生を生きていく。劣等感を捨てて前を向きましょう。その人生に子供が必要なのか、子供とどんな家庭を築きたいのか、よく考えてみてくださいね。

養子縁組で家族を迎えるために条件や手続き方法を知って準備しよう

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養子縁組で子供を迎えることは、育ての親となる夫婦にとっても生みの親にとっても大きな決断といえます。制度や条件、手続きなど複雑な部分もありますが、なによりもこれから家族になる子供のことを一番に考えて、温かい家庭環境を準備してあげることが大切です。

養子縁組に関する法律や制度は、年々変わっていくものです。常に最新情報を入手するようにして、新しい家族を迎えるためのステップを進めていけるといいですね。

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