卵子提供とは?費用やリスクは?日本で可能なの?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

赤ちゃんを授かりたいと思っていても、年齢や病気などが理由でなかなか恵まれない夫婦もいます。不妊治療の技術は進歩していますが、100%解決できるわけではありません。ただし、自分の卵子で妊娠できない場合でも、「卵子提供」を受けるという方法が残されています。今回は、卵子提供について、費用やリスクのほか、日本国内や海外で受けられるのかなどをご説明します。

卵子提供とは?受ける条件は?

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卵子提供とは、その名のとおり、第三者から卵子を提供してもらって、体外受精などで妊娠を試みる方法です。

たとえば、病気による卵巣摘出や、早発閉経などで排卵がなくなってしまった人が卵子提供を受けます。体外受精を何回試みても妊娠できず、その原因が卵子にあると認められた場合にも行われることがあります。

ただし、年齢が高いことが理由で妊娠できない夫婦は、卵子提供を受けることができません。この判断は医師に委ねられており、妻の年齢が50歳以上であることが目安とされています(※1)。

卵子提供は日本国内で受けられる?

そもそも日本では、卵子提供に関する法律や制度が十分に整っていません。不妊治療専門のクリニックなどが集まって、「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」という団体を作り、独自のガイドラインを定めて卵子提供を行っているのが現状です(※1)。

日本国内では、JISARTの卵子提供ガイドラインで決められた条件を満たしていると判断されれば、「卵子提供実施施設」で卵子提供を受けることができます。

しかし、親族や知人など卵子を提供してくれる人を自分たちで探す必要があるうえ、卵子提供を実施できる指定の医療施設が少ないといった課題もあり、日本国内では今のところ数十件程度しか実績がありません。

卵子提供は海外でも受けられる?

海外には不妊治療の一環で卵子提供を行っている国があり、卵子提供を受けるために日本から渡航する人もいます。日本人が卵子提供を受けている主な国として、アメリカやタイ、台湾などがあります。

日本国内には、海外での卵子提供をサポートするエージェントがいくつかあり、ドナーの選定や医師の紹介、渡航の手続きなどを請け負ってくれます。

海外渡航による卵子提供では、1~2回ほどの渡航で卵子提供者との契約や様々な検査を行い、体外受精による受精卵の移植を受ける必要があるので、1回の移植で通常3~4ヶ月ほどかかります。

卵子提供を受ける費用は?

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JISARTが指定する日本国内の医療機関で卵子提供を受ける場合、事前検査やカウンセリングなどの諸経費だけで約100万円かかります。体外受精の胚移植など、卵子提供後の治療費は別途かかるので、全部合わせると1回あたり150万円程度の費用が必要です。

病院や治療内容によっても異なるため、あくまで参考程度に考えてください。

卵子提供による出産の確率はどのくらい?

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卵子提供を無事受けられたとして、実際に出産まで至るケースはどのくらいあるのでしょうか?

JISARTによると、2007~2017年の約10年間で、日本国内で実施された卵子提供は73件、そのうち生まれた子供の数は双子も含めて37人と、出産まで至る確率はほぼ50%です(※2)。

卵子提供のリスクも踏まえて判断しましょう

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病気などが原因で卵子を作れない女性にとって、卵子提供は子供を授かるための希望の道といえます。日本国内での実績はまだ少ないですが、海外で卵子提供を受けることも可能です。

しかし、卵子提供を受けたあとは体外受精をすることになるので、双子や三つ子などの多胎出産になるリスクがあります。また、無事に出産した後には、「将来どのように子供に説明するか」といったことも考える必要があるかもしれません。

卵子提供に伴うリスクや費用などを踏まえたうえで、出産や子育て、子供の成長までを視野に入れて総合的に検討しましょう。

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