ホルモン補充周期とは?移植日の決め方やスケジュールは?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

体外受精で胚移植を行う場合、できるだけ妊娠しやすいタイミングで移植することが大切です。そのためにできることの一つが、「ホルモン補充周期」を利用する方法です。今回は、ホルモン補充周期とはどのようなものなのか、移植日や判定日を含むスケジュール、生理や基礎体温の変化、着床率への影響についてご説明します。

ホルモン補充周期とは?

疑問 答え アンサー

体外受精で培養した胚を子宮内に戻すとき、着床しやすい子宮環境になっていることが重要です。自然妊娠であれば、受精卵の成長とともに子宮内膜が充実して、着床の準備が進みますが、体外受精の場合は人工的に、子宮内膜が充実する時期と移植のタイミングを合わせる必要があります。

自然の排卵周期に合わせて、子宮内膜が充実するのを待って移植することを「自然周期法」と呼びますが、正確な排卵日を特定するのが難しく、最適な着床日を決定しづらいという問題があります。

また、排卵誘発剤で卵巣を刺激している場合、子宮内の環境が着床に向けて整っていない可能性もあります。

そこで、ホルモン剤を投与して人工的に排卵周期を調整し、移植日を決めることもあります。これが「ホルモン補充周期法」です。この方法であれば、子宮内膜をしっかりと充実させた状態、つまり、着床に最適なタイミングで移植することが可能になります。

一般的には、培養した胚をいったん凍結し、ホルモン補充により着床しやすい子宮内膜の状態をつくったうえで、胚を解凍して移植します。これを、「凍結胚移植」といいます。

ホルモン補充周期法のスケジュールは?移植日の決め方は?

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ホルモン補充周期で凍結胚移植を行う場合、2つの女性ホルモンを順番に投与します。スケジュール例は次のとおりです(※1)。

1. エストロゲン(卵胞ホルモン)の補充

生理1~3日目あたりから、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」を補充するエストロゲン製剤を毎日服用します。エストラーナテープを使用する場合、その人にあった枚数のテープを下腹部やお尻に貼ります。

エストロゲンには子宮内膜を充実させる作用があり、補充することで妊娠しやすい子宮内環境を整えます。また、エストロゲン製剤を投与することで、ほとんどの場合、卵胞の発育と自然排卵が抑制されます。

しかし、なかには子宮内膜が十分に厚くなる前に自然排卵が起こってしまい、治療に支障をきたすケースもあります。そこで、事前にGnRHアゴニスト製剤を投与することで、排卵を抑制することもあります(※2)。

2. 超音波検査

エストロゲン製剤の投薬開始から13日目あたりに超音波検査を行い、子宮内膜の厚さが十分か、自然排卵する可能性はないかなどを確認します。また、血液検査によりエストロゲン製剤が十分に吸収されているかを調べることもあります(※2)。

検査結果が正常であれば、プロゲステロン製剤の投与の準備をします。ただし、検査の結果、エストロゲン値が低かった場合、エストロゲン製剤の使用量を増やしたり、黄体ホルモン剤の投与開始を延期したりすることもあります。

3. プロゲステロン(黄体ホルモン)の補充

超音波検査の結果にもよりますが、エストロゲン製剤を投薬して約2週間後から、ルトラールなど「プロゲステロン(黄体ホルモン)」を補充するプロゲステロン製剤も投与し始めます。

血中プロゲステロン値を、自然排卵周期と同じ程度に保つことで、子宮内膜を着床しやすい環境に整えます。そして、胚盤胞移植であれば、プロゲステロン製剤を投与して5日目頃に移植が行われるのが一般的です。

このように、自然に近い生理周期をホルモン剤によって作り出したうえで胚移植を行います。移植が終わり、妊娠が成立したあとも、妊娠6~7週頃まで投薬を継続します(※2)。

ホルモン補充周期法のメリット・デメリットは?

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ホルモン補充周期のメリット

最大のメリットは、エストロゲン・プロゲステロンをホルモン剤で補うことによって、着床率が上がることです。自然に排卵しにくい、子宮内膜が厚くなりにくいなど自然周期では妊娠しにくい人でも、効果を期待できます。

また、自然周期では子宮の状態によっては移植を延期しなければならないこともありますが、ホルモン補充周期であれば移植日がずれにくいため、通院のスケジュールを組みやすくなります。

ホルモン補充周期のデメリット

一方で、ホルモン剤を継続的に投与することで金銭的・身体的な負担が増えてしまう、というデメリットも。妊娠成立後も、胎盤が形成されてから十分な量の女性ホルモンが産生・分泌される妊娠6~7週までは投薬を続ける必要があるため、時間や精神面での負担もあります。

また、ホルモン剤の副作用が出る可能性もあるので、医師と相談の上、自然周期とホルモン補充周期のどちらがよいかを考える必要があります。

ホルモン補充周期の移植後に出血が起きることもある?

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ホルモン補充周期で移植した際のマイナートラブルとして、少量の不正出血が見られることがあります。これは、エストロゲン製剤で子宮内膜が育ってきても、排卵が抑制されているためにプロゲステロンが作られず、子宮内膜が維持できずに途中で剥がれてしまうことで起こります。

不正出血が起こった場合、ホルモン補充周期を一度リセットする必要があることもあるので、出血が見られたら、担当医に相談してください。

ホルモン補充周期で着床率を高めよう

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ホルモン補充周期で移植する場合、自然排卵周期による胚移植よりも着床率が高まります。金銭的・身体的な負担はありますが、ホルモンバランスや子宮内膜の状態があまり良くない場合、検討する価値はある方法です。

医師と相談しながら、自分にとってより良い治療法を選択しましょう。

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