不妊治療の現場では、様々な種類の排卵誘発剤が使われています。注射タイプの排卵誘発剤は、直接卵巣に働きかけることでより高い効果を発揮します。そのうちの一つに「フォリスチム」という薬がありますが、具体的にどのような効果や副作用があるのでしょうか?今回は、フォリスチムによって排卵誘発が起こる仕組みや、気をつけたい副作用についてご説明します。
フォリスチムとは?不妊治療に使われるの?
フォリスチムとは、「FSH製剤」と呼ばれる排卵誘発剤の一つです。
卵胞の成長を促す「卵胞刺激ホルモン(FSH)」を人工的に作り出したもので、体内に注入することで卵胞刺激ホルモン作用を補い、卵胞の発育を促します。
フォリスチムは、無排卵などの排卵障害で不妊症に悩んでいる人や、体外受精のために採卵が必要な人などに使用されます。
フォリスチムの効果は?
フォリスチムには、卵巣を刺激して卵胞を一定の大きさまで発育させたり、複数の卵胞を育てたりする効果があります(※1)。
排卵誘発剤のなかには、「hMG製剤」という治療薬もあります。これは、卵胞刺激ホルモン(FSH)のほかに黄体形成ホルモン(LH)の作用も持ち、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」の発生リスクが高まることがわかっています(※2)。
一方、フォリスチムのようなFSH製剤は、できるだけLH活性を取り除いたものであり、従来のhMG製剤と比べてウイルス感染やアレルギーなどの問題が軽減されるというメリットがあります(※3)。
ただ、FSH製剤とhMG製剤は個人の体質や治療法に応じて処方されるもので、一概にどちらが優れているとはいえません。
フォリスチムの副作用は?
フォリスチムは、注射タイプの排卵誘発剤で、経口薬に比べると高い効果が期待されます。その一方で、過剰に卵巣を刺激してしまうことによる副作用もあるので、注意が必要です。
製造販売元の報告によると、フォリスチムを使った女性のうち10%前後の人になんらかの副作用が現れたとされます(※1)。主な症状は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や頭痛、腹痛やお腹の張りなどです。
もし、体調が優れない場合はすみやかに医師に相談し、投与量を調整する、投与をやめるなど適切な処置をしてもらいましょう。
また、これはフォリスチムに限らないことですが、ホルモン製剤を用いた不妊治療の場合、双子や三つ子など多胎妊娠の確率が高くなります。
多胎妊娠は、単胎妊娠と比べて流産・早産や妊娠高血圧合併症などを起こしやすいので、こういったリスクについても医師からよく説明を受けておきましょう。
フォリスチムの使い方は?自己注射できる?
フォリスチムは、皮下注射により投与します。卵胞を十分に発育させるため、数日間打ち続ける必要があります。
通常、4~7日間ほど注射を続けて、その後はエコー検査などで卵胞の発育の程度を見ながら量を調節していきます。一定以上の大きさまで卵胞が育ったことを確認できたら、hCG製剤を投与して排卵を促します(※1)。
基本的には、病院に毎日通って注射を受けますが、自分で皮下注射を行う「自己注射」も可能です。遠方まで通院するのが難しかったり、仕事があって忙しかったりする人にとっては助かりますね。
自己注射によるフォリスチムの投与を希望する場合は、方法について医師から説明・指導をしてもらってから、用法・用量を守って正しく使いましょう。
フォリスチムの注射を根気強く続けましょう
不妊治療で排卵誘発剤を使う機会がある人も多いと思います。その際、排卵誘発剤の効果と副作用を理解しておくことは、治療を進めていくうえで重要なことです。
フォリスチムの注射は、毎日打つ必要があるので大変ですが、卵胞が無事に大きくなってくれることを信じて、根気強く続けましょう。不安や疑問があればきちんと医師に相談し、できるだけ不安のない不妊治療を進めてくださいね。