精子バンク・精子提供とは?非配偶者間人工授精ってなに?

監修医師 泌尿器科 小堀 善友
小堀 善友 プライベートケアクリニック東京 東京院院長。2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日... 監修記事一覧へ

「精子バンク」や「精子提供」をご存じですか?女性が妊娠・出産のために、自分のパートナー以外の男性から精子だけを提供してもらうためのものです。日本ではあまり認知されていませんが、実際に精子バンクや精子提供によって生まれている子供もいます。今回は精子バンクや精子提供について、日本での実態はどうなっているのか、非配偶者人工授精で利用できるのか、どれくらいの費用がかかるのかなどをご説明します。

精子バンク・精子提供とは?

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精子バンクとは、男性から提供された精液を冷凍して保管する団体もしくは施設です。妊娠を望む女性に、保管していた精子を提供します。

世界に例をみると、パートナーが無精子症などの男性不妊のために妊娠が難しいと診断されたカップルや、男性との性交渉は行わずに子どもを育てたいと願う女性、結婚しないままで子供だけを産み育てたいと思う女性など、さまざまな人が利用しています。

精子提供とは、自分の精液を提供することをいい、有償のものもあれば、無償のものもあります。

日本での精子バンク・精子提供の現状は?

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厚生労働省の「厚生科学審議会生殖補助医療部会」では、精子バンクや精子提供を利用できるのは「子を欲しながら不妊症のために子を持つことができない法律上の夫婦に限る」という条件を設けています(※1)。

また、精子提供者は満55歳未満の成人で、匿名でなければならないという条件もあります(※1)。

夫婦関係にある男性パートナーがいない女性(婚姻関係を望まない女性など)のなかには、医療機関では精子提供をなかなか受けられないので、インターネット経由で精子提供を行っている個人や団体に連絡をとって、精子提供を受けている人もいます。

また、莫大な費用がかかりますが、海外の精子バンクを利用する人もいます。

ただし、精子提供に関する国内の法整備はいまだ進んでおらず、厚生労働省が設けている条件は法的な力はありません。

したがって、医療機関を通さずに個人的に出会って精子提供を受けている人たちもいて、感染症が起きるリスクなどさまざまな問題点が指摘されています。

アメリカでの精子バンク・精子提供の現状は?

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アメリカは精子バンクの歴史が長く、さまざまな形の精子提供が存在します。たとえば、アメリカでは髪や目の色、身長、体重、職業といった細かいプロフィールを見たうえで、精子提供者を選ぶことができます。

精子提供者の職業などによって、費用が変わることもあります。しかし、1人の精子提供者に人気が集まりたくさんの異母兄弟が生まれると、彼らが結婚した場合、意図せず近親相姦になってしまう可能性があります。

被提供者側の要望が反映されやすい反面、それに伴うリスクが発生しているというのが現状です。

精子バンクの非配偶者間人工授精(AID)とは?

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非配偶者間人工授精(AID)とは、第三者から提供された精子を女性の子宮内に人工的に注入して授精させる方法です。

基本的に、日本の医療機関では、夫婦関係にある男性パートナーが不妊症である場合のみ精子バンクを利用できますが、それはこの非配偶者間人工授精にあたります。

女性の生殖機能に特に問題がなくても、精液中に精子が全くない無精子症などの不妊症が男性側にあれば、2人の子供を作ることは難しいといえます。

このように、精子バンクによる精子提供を受けなければ子供を授かれないということがはっきりしている場合に、最後の手段として非配偶者間人工授精が行われることがあります。

日本産科婦人科学会は、「提供精子を用いた人工授精に関する見解」を示しており、「生まれてくる子供の権利・福祉に十分配慮」する必要がある、としています(※2)。

しかし、今のところ日本では「出自を知る権利(自分がどのようにして生まれたのか、を知る権利)」を定めた法律やガイドラインがなく、非配偶者間人工授精によって生まれた子供が遺伝上の父親を知ることはできません。

最近では、この「出自を知る権利」の法制化を求める動きもあり、精子提供者が激減しているという現状があります。

精子バンク・精子提供の費用はいくらくらい?

精子バンクや精子提供を利用する際の費用は、団体や提供者によって大きく異なり、無料ということもあれば、精子提供を1回行うたびに数万円の費用が発生することもあります。特に海外の精子バンクを利用する際は費用が高くなる傾向にあり、数百万円のお金を支払わなければいけない場合もあります。

精子バンク・精子提供を利用する際は費用について細かく確認をとるようにしましょう。

精子バンク・精子提供についてしっかり話し合おう

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精子提供や精子バンクについては、倫理的な問題も絡むため、賛否両論があります。ただ、男性不妊で子供を授かることができない夫婦にとっては、一つの可能性と考えることもできます。

日本ではまだまだ認知されていないこともあり、精子提供を受けることは簡単に決められるものではありません。パートナーの男性にとっては、自分と子供の血がつながっていないという思いが少なからず心に残ってしまうかもしれません。

精子バンク・精子提供を利用するかどうかについては、パートナーときちんと話し合って決断することが大切です。

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