女性特有の病気として「子宮体がん」があります。40歳代後半~60歳代の女性によく見られる子宮体がんは、進行ステージによって生存率も変化してきます。そのため、検診を定期的に受け、早期発見・早期治療に努めることが大切です。今回は、子宮体がんの検査方法のほか、ステージによる治療法・生存率の違いについてご説明します。
子宮体がんとは?
子宮にできるがんは2種類あります。子宮の出入り口の子宮頸部にできる「子宮頸がん」と、子宮の上側の子宮体部にできる「子宮体がん」です。子宮体がんは主に、子宮の内側を覆う子宮内膜の細胞ががん化することで起こるため、「子宮内膜がん」とも呼ばれます。
卵巣から分泌される女性ホルモンの「卵胞ホルモン(エストロゲン)」が子宮内膜の発育を促すため、子宮体がんの発症にもなんらかの影響を与える可能性が指摘されています。エストロゲンによる刺激に長期にさらされると、「子宮内膜増殖症」になることがあり、これが子宮体がん(Ⅰ型)の前段階になると考えられています。
ただし、10~20%の確率で、エストロゲンとは関係なく子宮体がん(Ⅱ型)を発症することもあります。
子宮体がんの検査を受けるべき症状は?
子宮体がんを発症しても、初期段階では痛みがありません。閉経後、不正性器出血や水っぽいおりものが見られた場合は、子宮体がんの可能性が疑われます。出血が少ない場合、おりものが褐色から黄色になり、子宮内感染がある場合、膿が出るようになります。
がんの範囲が子宮体部を越え、骨盤内組織にまで広がってくると、下腹部痛などが現れます(※1)。
これらの自覚症状が見られた場合は、早めに婦人科を受診して検査を受けましょう。子宮体がんの発症数が多い40~60歳代の女性は、自覚症状がなくても1~2年に1回、子宮体がん検診を受けておくと早期発見につながります。
子宮体がんの検査方法は?痛みはあるの?
内膜細胞診
子宮体がんの検査は、スクリーニングとして「内膜細胞診」を行います。この検査では、子宮内部に細い棒状の器具を挿入して子宮内側の細胞をこすり取るので、人によっては少し痛みを伴うかもしれません。
内膜細胞診によって、子宮体がんを検出できる確率は80~95%といわれています(※1)。
経腟超音波検査
子宮体がんが疑われる場合、内膜細胞診とあわせて「経腟超音波検査」も行われることがあります。細胞診で悪性と思われる所見がなかった場合でも、経腟超音波検査の結果、子宮内膜の厚みが増していることが確認されれば、子宮体がんの可能性があると判断されます。
プローブという器具を直接膣内に入れて行う検査なので、挿入の際に少し痛みや違和感を感じる人もいるかもしれません。
内膜組織診
内膜細胞診や経腟超音波検査の結果、疑わしいところがあれば、「内膜組織診」でより詳しく細胞を調べます。
専用の器具を子宮腔内に入れ、細胞組織を掻き出して診る検査です。これもやはり、人によっては挿入や掻爬(そうは)で痛みを覚えるかもしれません。痛みや不安が強いようであれば、麻酔をかけて検査することもあります。
その他の補助診断
内膜組織診の結果が陰性でも、不正性器出血や子宮腫大などが見られ、子宮体がんを否定できない場合には、補助診断として子宮鏡検査やMRIなどを行うこともあります。
子宮体がんの各ステージの治療法・生存率は?
検査の結果、子宮体がんだと判断された場合、主な治療法は外科手術です。まず臨床所見の結果、手術方法が決められ、術後に進行期(ステージ)が決定されます。
子宮体がんのステージ
進行期(ステージ)は、前がん症状として子宮内膜増殖症が見られるのを0期とし、そのあとはⅠ~Ⅳ期の4つに分けられます(※2)。
ステージ | 子宮体がんの状態 |
Ⅰ期 | 子宮体部にのみとどまっている |
Ⅱ期 | 子宮体部を越えて、頸部にも広がっている |
Ⅲ期 | 卵巣・卵管など子宮外にも広がるか、リンパ節に転移している |
Ⅳ期 | 骨盤下部の小骨盤腔を越えて広がるか、膀胱・腸の粘膜にも広がっている |
子宮体がんの各ステージの治療法
0~Ⅰ期の段階で、年齢が若く妊娠の可能性のために子宮を残したいという場合、子宮を摘出せずにホルモン療法を行いながら経過観察することもあります。
Ⅰ~Ⅲ期では、がんが広がっている範囲によって、子宮や卵巣、卵管、リンパ節を摘出する手術を行います。手術の結果、再発の可能性が高いと判断された場合には、抗がん剤などを使った化学療法や放射線治療が行われます。Ⅳ期では化学療法が中心です。
子宮体がんの各ステージの生存率
国立がん研究センターが示す2016年のデータによると、子宮体がんと診断された患者の5年生存率は、Ⅰ期が94.9%、Ⅱ期が90.0%、Ⅲ期が68.3%、Ⅳ期が16.8%です(※3)。
これらの数値は、すべての患者に当てはまるわけではありませんが、統計的には子宮体がんが早期に発見されるほど高い生存率が望めるといえます。
定期的に子宮体がん検査を受けて早期発見
子宮体がんは、特に閉経後に発症リスクが高まる病気です。40歳代後半~60歳代の女性によく見られるため、一つの目安として30代後半に入ったら、1~2年に1回の頻度で子宮体がんの検診を受けるようにしたいですね。
早期発見できるほど、手術で摘出する範囲を最小限に抑えることができ、術後の生存率も上がりますよ。