「代理出産」とは、何らかの理由で子供を授かることができない夫婦が、代わりに第三者の女性に妊娠・出産してもらう方法です。日本では基本的に実施されないため、海外に渡航して代理出産を行うケースもあります。今回は代理出産について、具体的な方法や流れ、費用のほか、メリットや問題点などもご説明します。
代理出産とは?代理母はどんな人?

代理出産(代理懐胎)とは、簡単にいうと「子供を望む夫婦が、妻以外の第三者の女性に妊娠・出産してもらうこと」ですが、条件によって次の2つに分けられます(※1)。
代理母(サロゲイトマザー)

依頼者の夫の精子を第三者の女性の体内に注入し、その人の卵子と受精させ、妊娠・出産を目指す方法です。
この場合、生まれてくる赤ちゃんは依頼者(妻)とは血縁関係がありません。
借り腹(ホストマザー)

依頼者夫婦の卵子と精子を体外受精させてできた受精卵を、第三者の女性の子宮に入れて妊娠・出産させる方法です。
この場合、生まれてくる赤ちゃんは依頼者夫婦の両方の遺伝子を受け継ぐことになります。一般的に「代理母出産」と呼ばれるものは、この「借り腹」による方法であることが多いようです。
なお、代理出産を請け負う代理母は誰でもなれるというわけではなく、仲介業者によって「最低1人の健康な赤ちゃんをすでに出産した経験がある」「年齢が35歳以下である」といったいくつかの条件が設けられています。
代理出産を検討するのはどんなケース?

代理出産の依頼を検討する人の事情は様々ですが、生まれつきの体質や、過去の摘出手術などが理由で卵巣や子宮がない、もしくは機能していない、といったことが考えられます(※2)。
また、欧米など海外では、排卵や受精、着床の機能などに問題があり、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)を利用しても妊娠・出産が望めない場合に、代理出産が検討されることも少なくありません。
日本人でも、何度も流産・死産を繰り返す「不育症」であったり、何度か不妊治療を試みたもののうまく行かず、子供をなかなか授からなかったりしたときに、代理出産を選択肢のひとつとして検討する夫婦もいます。
代理出産は日本では法律で禁止されている?

日本国内での代理出産(代理懐胎)は、法律で禁止されているわけではありません。
しかし、倫理的観点などから、日本産科婦人科学会が「代理懐胎の実施に関与したり、斡旋したりしてはならない」という通達を出しており、政府の厚生科学審議会も「代理懐胎は禁止する」という見解を示していることもあり(※3,4)、日本国内で代理出産が行われることは基本的にありません。
一方、海外では不妊治療の延長として代理出産を行っている国もあるため、日本で代理出産できない夫婦が可能性を求めて海外へ渡航するケースもあります。
ひと昔前はアメリカでの代理出産が主流でしたが、最近ではロシアやマレーシアなど、比較的安く代理出産を行える国々も注目を集めています。
代理出産の流れや費用は?

代理出産の手順は依頼者の状況や仲介業者によっても異なりますが、大まかな流れは次のとおりです。
代理出産の流れ

1. 仲介業者に問い合わせる
2. 仲介業者に費用やリスクについて相談する
3. 仲介業者と契約する
4. 代理母を選定する
5. 海外へ渡航し、採卵や体外受精、胚移植を行う
6. 代理母の妊娠判定を行う
7. 約10ヶ月後に代理母が出産する
8. 依頼者が生まれた子供を連れて帰国する
海外で代理出産を行う場合、仲介業者へ支払う仲介料のほか、渡航費や滞在費なども必要となるため費用がかさみます。
目安として、ロシアやマレーシアなどでの代理出産は400~800万円、アメリカでの代理出産は1,000~2,500万円程かかるといわれています。
代理出産の成功率は?年齢による?

基本的に日本で代理出産が行われないということもあり、海外に渡航して代理出産を行った場合の成功率がわかるデータはありません。
一般論として、代理出産の成功率は、代理母の子宮に移植される受精卵(胚)の質が影響していると考えられます。つまりこれは、代理出産を依頼する夫婦の精子と卵子の質に左右されるということです。
精子や卵子の質は、年齢が上がるにつれて下がっていってしまうため、代理出産を依頼する夫婦の年齢が高くなるほど、成功率は低くなると考えられます。
そのため、代理出産を仲介する業者の多くは、依頼者の年齢上限を設けているようです。
代理出産のメリットや問題点は?

代理出産には、次のようなメリットと問題点があると考えられています(※3,4)。
代理出産のメリット

● 生殖機能などに問題があり、妊娠・出産ができない夫婦でも、自分たちの遺伝子を受け継ぐ子供を授かることができる
● 健康な代理母の子宮を借りることで、依頼者の女性が不妊治療を受け続けるよりも妊娠率が高まる可能性がある
代理出産の問題点

● 代理母に妊娠・出産のリスクを負わせることになる
● 代理母が、生まれた子供を依頼者夫婦に引き渡したがらないことがある
● 障害を持って生まれた場合など、依頼者夫婦が子供の引き取りを拒否することがある
● 戸籍上、依頼者夫婦と子供とのあいだに親子関係が認められないことがある
● 将来、生まれてきた子供が出生の事情などに悩む可能性がある
代理出産は慎重に検討を
先天的な体質や何らかの病気などが理由で、子供を授かることをあきらめていた夫婦にとって、代理出産は大きな救いになる可能性があります。
一方で、代理出産にはさまざまな問題点も指摘されており、高額な費用もかかります。夫婦で情報収集をしたうえで、慎重に検討したいですね。