ゾラデックスとは?副作用は?子宮内膜症に効果があるの?

監修医師 産婦人科医 渡邉 京子
渡邉 京子 産婦人科専門医。長門クリニック勤務。女性特有の月経や更年期にまつわる悩みの助けとなること、また、妊娠出産期を安心安全に過ごすお手伝いすること、を念頭に置いて日々診療しています。 監修記事一覧へ

「ゾラデックス」は、子宮内膜症の薬物療法で使われる薬のひとつです。投与することで女性ホルモンの分泌を抑制し、子宮内膜症の病巣を小さくする効果がある一方、更年期障害に似た副作用が出やすいという側面もあります。今回は、ゾラデックスの効果と副作用についてご説明します。

ゾラデックスとは?効果は?

注射

「ゾラデックス」は、製薬会社のアストラゼネカ社が製造・販売する、「GnRHアゴニスト」というホルモン療法の薬のひとつです。

ゾラデックスの主成分である「ゴセレリン」は、脳の視床下部から分泌される「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」に似た物質です。

ゾラデックスは脳下垂体に作用し、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌を抑えることで、強制的に閉経状態が作り出されます。

ゾラデックスの投与により、無月経・無排卵の状態が作られることで、子宮内膜の萎縮が促され、子宮内膜症の病巣を縮小・消失させることができます。また、エストロゲンの働きを弱めることで、乳がんの進行を抑える効果もあります。

ゾラデックスの子宮内膜症に対する効果は?

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子宮内膜症の治療には、「薬物療法」「手術療法」「対症療法」の3種類の方法があります。

薬物療法のうちでも、ゾラデックスを始めとするGnRHアゴニストの場合、薬を投与して排卵を止めることで、一時的に子宮内膜症の症状を緩和することができます。ゾラデックスの製造元の臨床試験データによると、ゾラデックスによる子宮内膜症の改善率は83.8%です(※1)。

しかし、日本子宮内膜症協会によると、治療後、再発までの時間を最も長くすることができるのは手術療法であり、欧米の医療では薬物療法よりも腹腔鏡下手術が優先的に選択されています(※2)。

ゾラデックスの使い方は?注射で投与する?

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ゾラデックスは、服用するのではなく、皮下注射で直接体内に注入します。通常、成人の場合は薬剤1筒(ゴセレリン1.8mg含有)を「4週(28日)ごとに1回」、前腹部に皮下投与します。1回の注射で、ゾラデックスの成分がゆっくりと血液中に放出されていきます。

ゾラデックスによる治療を開始するときには、まず妊娠していないことを確認し、初回は必ず生理中に皮下注射します。また、治療期間中は避妊する必要がありますが、ピル(経口避妊薬)はゾラデックスの作用に影響を及ぼすため、使用することができません(※1)。

なお、原則的には6ヶ月より長くゾラデックスの使用を続けることは推奨されていません。薬物療法で症状の改善が見られない場合には投与を中止し、手術を行うなどの治療法が検討されるのが一般的です。

ゾラデックスの副作用は?

女性 頭痛 不調

製造元の臨床試験データによると、ゾラデックスを使用した人のうち約75%で、下記のような副作用が報告されています(※1)。症状の強さには個人差がありますが、日常生活に支障が起きるケースもあります。

副作用がひどい場合には、すぐに主治医に相談するようにしましょう。

更年期障害に似た症状

ゾラデックスの主な副作用は、「のぼせ・ほてり」「肩こり」「頭痛」など、更年期障害と同じような症状です。

ゾラデックスは強制的に閉経を引き起こす作用があるので、偽閉経状態によって卵巣機能が抑制されることによって、これらの症状が現れるとされています。

内分泌系の症状

割合としてはそれほど多くありませんが、ゾラデックスの副作用として「性器出血」「乳房の張り」「膣の乾燥感」「性欲減退」などが見られることもあります。

重大な副作用

ゾラデックスの副作用のうち特に重症なものとして、アレルギーの一種である「アナフィラキシーショック」や「肝機能障害」「黄疸」のほか、心筋梗塞や脳梗塞などの「血栓塞栓症」が挙げられます。

いずれも症状が現れる割合は0.1%未満ですが、命に関わる危険性があるため、これらの異常が認められた場合は、すぐにゾラデックスの使用をやめ、適切な処置を行う必要があります。

ゾラデックスでの治療は、医師と相談のうえ進めましょう

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子宮内膜症になったからといって、100%妊娠を望めないというわけではありません。しかし、子宮内膜症は不妊症を引き起こす要因のひとつではあるので、治療を受ける際に妊娠の希望を医師に伝え、自分に合った適切な治療を選択することが大切です。

ゾラデックスの投与中は子宮内膜症の症状は緩和されますが、排卵を止めることで閉経状態を作り出す作用があるため、自然妊娠が望めるのは投与を終了した後ということになります。

また、症状が改善されない場合、手術療法など他の治療方法を選択しなければならないケースもあるため、医師と相談しながら自分にあった治療方法を見つけていきましょう。

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