妊娠が進むにつれてお腹はどんどん大きくなり、妊婦さんの体にも負荷がかかるようになります。妊娠中の腰痛は、運動不足による腹筋や背筋の筋力低下が原因の一つといわれています。症状が悪化して「腰が痛くて歩けない」「痛みで眠れない」という妊婦さんもいるのではないでしょうか。そこで今回は、妊娠中の腰痛対策に効くストレッチをご紹介します。
妊娠中に腰痛が起きやすい理由は?

妊娠中の腰痛は、主に妊娠によって変化したホルモンバランスによって骨盤が歪みやすくなったことや、大きくなってくるお腹を支えるために姿勢が悪くなったことが原因として考えられます。
妊娠すると、「リラキシン」という女性ホルモンが分泌され、出産に向けて赤ちゃんが産道を通りやすいように骨盤の靭帯を緩めてくれます(※1)。
同時に腰の左右の骨盤をつなぐ「恥骨結合」という部分まで緩んでしまい、骨盤が不安定になります。
また、妊娠中期~後期になると、妊婦さんはお腹が前にせり出したような姿勢になり、腰が反って重心が前にかかった状態になります。
こうした、骨盤の歪みや姿勢、重心の変化によって、腰回りの筋肉、靭帯、関節に大きな負荷がかかり、妊婦さんは腰痛を引き起こしやすい状態になっているのです。
妊婦の腰痛に効くストレッチとは?
ここでは、妊婦さんの腰痛に効くストレッチ方法をご紹介します。
妊娠中は運動ができないと思われがちですが、体調や妊娠の経過をみながら、妊婦さん向けのストレッチなら行うことができます。
以下のストレッチは自宅で簡単にできるものばかりです。お腹の張りに気をつけながら、無理のない程度でストレッチを実践してみましょう。ストレッチ中にお腹の張りや違和感を感じたら、すぐにやめて安静にしてくださいね。
1. 猫のポーズ
場所を選ばずに、手軽にできるストレッチです。妊娠後期に悩まされる、便秘解消も期待できます。
- 両足の膝を肩幅に、両手は両肩の真下にくるような姿勢で四つん這いになる
- 息を吐きながら、おへそを見るようにして背中を丸めていく
- ゆっくり、深く呼吸をしながら背中を気持ちよい所まで反らす
- 2~3の動作を2、3回繰り返す
2. 椅子を使ったストレッチ
仕事の休憩時間などにもできる、手軽なストレッチです。
椅子は誰かに座ってもらったり、固定された棚などを使うなどして安全を確認してからストレッチをするようにしてください。
- 足と手を肩幅くらいに広げ、椅子の背もたれを手でしっかりとつかむ
- 肩が椅子の背もたれと同じ高さになるまで、腕を伸ばしながら頭を下げる。立ち位置が椅子と近いときは、少し後ろにずらす
- 頭の先からお尻にかけて背もたれから一直線になっている状態で、息を吐きながら背骨を伸ばす
- 2~3の動作を3回ほど繰り返す
3. 腰のツイストストレッチ
骨盤周り全体に効果があるとされているストレッチです。
骨盤に歪みがあると、少し痛みを感じることもあります。その場合はすぐにやめましょう。無理のない範囲でストレッチするようにしてください。
- 仰向けに寝て、膝を軽く立てる
- 膝をつけたまま、足を右側にゆっくり倒す。このとき、上半身はなるべくに傾かないようにする
- 足を元の位置に戻し、同様にして足を左側に倒す
- 2〜3の動作を3回ほど繰り返したら、足を元の位置に戻して腹式呼吸でリラックスする
4. 腰まわしストレッチ
仙骨の歪みに効果があるとされているストレッチです。
仙骨は骨産道の一つで、骨産道が広がりやすいと分娩がスムーズになるとされています。
- 足を肩幅に広げて立つ
- 肩の力を抜いて、腰に両手をあてる
- 骨盤の向きを正面に固定したまま、水平に腰を回す(左右5回ずつ)
妊婦が腰痛に効くストレッチをするときの注意点は?

妊婦さんがストレッチをするときは、お腹の赤ちゃんを圧迫しないように注意する必要があります。
無理な前屈やうつ伏せになるストレッチ、腹筋など、お腹を締めつけたり負荷がかかったりするストレッチは避けてください。
また、お腹が張っている、痛い、不正出血があるなど、体調が優れないときはストレッチを控えましょう。妊娠中は血圧も変動しやすいので、途中で不調を感じたらすぐにストレッチを中断してくださいね。
ストレッチを行うのは、体調が良いときだけでも十分です。1日3回くらいストレッチをするのがベストですが、まずは1日1回からはじめて習慣化していくようにしましょう。
筋肉がほぐれている入浴後を中心にストレッチを行うと、より効果が発揮されやすいのでおすすめです。
生活の中でできる妊婦の腰痛対策とは?

妊娠中に腰が痛くなったときは、ご紹介したストレッチを試すだけでなく、日常生活で姿勢を正したり、補正下着を身につけたりするのも効果的ですよ。
腰が痛くなったときや、腰痛を予防する対策方法を以下にご紹介するので、参考にしてみてください。
妊婦用の補正下着で骨盤を支える
妊婦帯や妊娠用のベルト・ガードルで、骨盤の緩みすぎを予防しましょう。骨盤を締めると、腰痛だけでなく尿漏れ、恥骨痛、子宮の張りといったトラブルを予防することもできます。
産後リフォームと兼用できるものや、妊婦専用のものもあります。お腹が苦しくならず、つけやすいものを選びましょう。「トコちゃんベルト」など広く支持されているものも多いので、自分に合ったものを見つけられると良いですね。
骨盤を歪ませる習慣をやめる
荷物を片側の肩にかけ続けたり、足を組んで長時間座ったりしていると、骨盤が歪む原因になります。
このような習慣がある人は、正しい姿勢を取るように意識しましょう。
妊娠中の腰痛に効くストレッチは自分のペースで行おう

妊婦さんの体には腰痛以外にも様々な不調が現れるため、腰痛を改善しようと思っても思うように対策がとれないこともありますよね。
しかし、妊娠中に焦って無理な運動をするのは、ママやお腹の赤ちゃんのためにもおすすめできません。
すぐに腰痛を改善するのは難しくても、日常生活の中で姿勢を整えたり、無理のない範囲でストレッチしたりするだけでも効果は期待できます。
今回ご紹介したストレッチは、どれも短時間で手軽にできるものばかりです。気長にじっくりと、自分のペースでストレッチを行うようにしましょう。
腰痛がひどくて動けないときや、手足にしびれが出るときは、妊婦健診時に相談してみましょう。マタニティ用のメニューがある整体やマッサージに通うなど、プロの手を借りるのもおすすめですよ。