2018年4月から始まった「妊婦加算」という新制度をご存じでしょうか。今ネット上で、「事実上の妊婦税(妊娠税)ではないか?」といった批判的な声が上がっており話題になっています。一体、妊婦加算とはどのような制度なのでしょうか。今回は、妊婦加算とはどのような制度で、適用されると自己負担額がいくら増えるのかといったことや、アンケート結果などをご紹介します。
妊婦加算とは?
2018年4月に実施された診療報酬の改定により、妊婦が医療機関の外来を受診した場合に支払う費用が値上がりしました。この新制度のことを「妊婦加算」といいます(※1)。
妊婦加算は、妊婦が病院で診察を受けると、病名や診療科にかかわらず、従来の初診料・再診料(外来診療料を含む)に一定額が加算される制度です。
妊婦加算の目的は、「妊婦の外来診療について、妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価するため」とされています。
妊婦加算で自己負担額はいくら増えるの?
妊婦加算が適用された場合、初診料の点数に75点、再診料に38点加算されます。診療報酬の点数は1点につき10円なので、金額に換算すると初診料は750円、再診料は380円の値上げということです(※1,2)。
ただし、健康保険等に加入していれば初診料・再診料は3割の自己負担で済みます。そのため、実際に支払う額としては従来よりも初診料が約230円、再診料が約110円増えるということになります。
なお、深夜や休日、時間外の診療についてはさらに増額されます。
妊婦加算についてよくある質問は?
ここでは、妊婦加算についてよくある質問とその回答をご紹介します(※3)。
妊婦加算が適用される条件は?
妊婦加算は、医師が診察して妊婦であると診断された場合に適用されます。ただし、妊娠に関係すること以外の診断のために必ずしも妊娠反応検査や母子健康手帳の確認が行われるわけではありません。
妊娠していることを知らずに受診したら?
「妊娠していることを知らずに受診して、後日妊娠していることが判明したら、後日妊婦加算が適用されるのでは」と思う人もいるかもしれませんね。
診察時に医師が妊娠していると判断しなかったのであれば、たとえそのとき妊娠していたとしても、後から妊婦加算が適用されることはありません。
一方、診察中に妊娠していると判明した場合、初診料や再診料が発生する診察であれば、妊婦加算が適用されることがあります。
妊娠に関係ない病気の診察にも適用される?
初診料や再診料が発生する診察を行った場合は、妊娠に関係のない病気であっても妊婦加算が適用されることがあります。
「妊婦加算は事実上の妊婦税だ」といった批判的な声を紹介
妊婦加算に対し、ネット上では「事実上の妊婦税なのでは?」といったような批判的な声が多数上がっています。ここでは、そうした声の一部をご紹介します。
今年4月からの妊婦加算、知らんかったわ。いやーこれもびっくりする。今までと完全に逆やんね。歯科検診が無料やったり妊婦健診が無料でチケットになったり、援助する方向やったのに。これ事実上妊婦税やんか。どんな国やのマジで。
— yukan (@yukankmr) 2018年9月8日
え?え?え?
「妊婦加算」ってのがあって、妊婦さんが病院かかると加点されるの?「少子化対策だ!」と言ってて、よけいにお金取るの??なんで??理解不能。
少子化まっしぐらだね!!!https://t.co/cUGvrDuKrD
— リチャ@おしゃべり息子 (@papa_ritya) 2018年9月6日
妊婦加算。妊婦は医療にとって負担だから余分に金をとるのは仕方がない子供のことを考えて負担せよと医者が擁護してたが、ただでさえ負担が大きいのにさらに負担させられるならじゃあ子供つくるのやめるという話にしかならないと思うんですが、まあそれでいいたらいいんじゃないでしょうか。
— 北守 (@hokusyu82) 2018年9月8日
ただし、こうした批判的な声がある一方で、妊婦の診察には特別な配慮が必要なので、自己負担額が増えるのもやむを得ないという声もあります。
妊婦加算についてのアンケート結果
妊婦加算については批判的な意見が目立ちますが、実際には賛成・反対の人はどの程度いるのでしょうか?
そこで今回、妊婦加算についてのアンケートを行いました(※4)。
妊婦加算に賛成か反対か
まず、妊婦加算に対して賛成なのか、反対なのかを質問しました。その結果は次の通りです。
- 賛成:6人(約5%)
- 反対:75人(60%)
- どちらとも言えない:44人(約35%)
妊婦加算に「賛成」の理由
次に、「賛成」と答えた人に、複数回答可でその理由を尋ねました。
- 値上がりの額がわずかだから:24%
- 妊婦以外に対しても同じような制度があるから:16%
- 妊婦の診察には特別な配慮や知識が必要なので、そのぶんの手間賃として妥当だと思うから:約5%
- その他:24%
妊婦加算に「反対」の理由
同様に、「反対」と答えた人に、その理由を尋ねました。
- 制度開始前にちゃんとした説明がなかったから:約70%
- 値上がりした分のお金が何に使われるのかわからないから:約49%
- 少子化が進むと思うから:約48%
- 妊娠に関係のない病気でも適用されるから:約42%
- そもそも値上がりするのが嫌だから:約27%
- その他:約14%
妊婦加算に「どちらとも言えない」と答えた理由
「どちらとも言えない」と答えた人にもその理由を尋ねたところ、いろいろな意見があったので、その一部を引用します。
妊婦さんに配慮しての診察は確かに手間がかかるので手間賃としては賛成だけれども、妊婦さんの負担にするのはどうかと思う。
適切に診て貰えて、なら構わない。妊娠中に内科で診て貰ったら「妊婦だから薬は出せない」で終わって初診料と受診料取られて馬鹿馬鹿しかった。(中略)そういった診察や処方がされず、安心して受診出来るなら少し料金が加算されるのも仕方ないかなとは思う。
医師への給与に反映されることへは賛成。国への納税をする人材の育成のために国が投資すべきで、妊婦が負担するのは違うと思う。
妊婦の診察において何か特別な配慮がなされる為の可算であるなら意味はわかるけれど、検診補助があっても検診を受けない人がいたりする中では診察を渋る人が増えたり、妊娠自体減るのではと思う。
まずは妊婦加算という制度を正しく理解しよう
初診料や再診料の自己負担額が増えて嬉しい人はいないかもしれませんね。事実、アンケートでは妊婦加算に対して批判的な意見が多数を占めました。しかし一方で、「納得できる」「仕方ない」といった意見もあります。
この制度がいいか悪いかはさておき、いざ受診したときに混乱しないためにも、妊婦加算についての理解を深めておきたいですね。
※4 アンケート概要
実施期間:2018年9月12日~9月13日
調査対象:こそだてハックfacebookページにて
有効回答数:125件
収集方法:Webアンケート