妊娠すると分泌される女性ホルモンとして、「リラキシン」という名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。妊娠前にはあまり耳にしないものですが、実はとても重要な役割を果たしているホルモンで、妊娠・出産に欠かせないものです。今回はリラキシンとはどういうものか、分泌の仕組みや作用、女性の体にどのような影響を及ぼすのかなどをご紹介します。
リラキシンとは?妊娠中に分泌される?
リラキシンとは、卵巣や子宮、胎盤などから分泌される女性ホルモンの一つです。
主に妊娠中に分泌量が増え、関節や靭帯を緩める作用があり、「子宮緩和因子」とも呼ばれています。リラキシンのおかげで、ママの産道周辺の関節や靭帯が緩まって、分娩時に赤ちゃんがスムーズに出てこられるようになるのです。
お産に必要なホルモンなので、妊娠中でも特に、妊娠後期~末期にかけて分泌量が増えるといわれています。
リラキシンは腰痛の原因になる?
妊娠すると、腰痛に悩まされる女性が多くいます。
原因は、子宮が大きくなることでの圧迫や、筋肉量の低下など様々ですが、その一つに、リラキシンの分泌があるとされています。
リラキシンの分泌が増えて子宮周りの靭帯が緩まると、骨盤が不安定になり、腰痛が起こりやすくなるのです(※1)。
ただし、妊娠中に靭帯を緩める作用があるホルモンは、リラキシンだけでなく、エストロゲンやプロゲステロンなど、いろいろなものがあります。また前述の通り、腰痛の原因は様々です。
妊娠中に腰が痛くなったからといって、全てがリラキシンのせいというわけではないことは覚えておいてくださいね。
リラキシンは恥骨痛の原因になる?
妊娠後期や臨月になると、恥骨が痛くなるという人も多くいます。
原因は、子宮の重みや赤ちゃんによる圧迫など様々ですが、リラキシンが関係していることもあります。
リラキシンが分泌されると、左右の恥骨をつなぐ「恥骨結合」という軟骨が緩み、それが痛みにつながります。分娩が近づくにつれて、痛みが強くなることもあります(※2)。
今まで痛みを感じていなかったのに、分娩の前日に突然恥骨が痛くなることもあるようです。
リラキシンによる痛みの対処法は?
妊娠中はマイナートラブルが起きやすい時期なので、腰痛や恥骨痛なども、ある程度は仕方ない部分があります。リラキシンは分娩に欠かせないホルモンなので、分泌をおさえることもできません。
妊娠中の痛みを和らげる、または予防するためには、下記のような方法を生活のなかに取り入れることをおすすめします。
軽く体を動かす
妊娠中の腰痛や恥骨痛は、筋肉量の低下や血行不良も関係していると考えられます。痛みがあるなかで動くのは大変かもしれませんが、軽いストレッチやウォーキングだけでもかまわないので、毎日少しずつ体を動かすようにしましょう。
また、デスクワークなどで座っている時間が長い人は、こまめに立ち上がり、伸びをしたり、腰を回したりするのもいいですね。
骨盤ベルトや腹帯を使う
骨盤ベルトで骨盤を固定すると、骨盤の歪みが予防できるほか、恥骨結合への負担が軽くなり、恥骨痛に効果が期待できます。
また腹帯は、大きくなったお腹を支え、姿勢を整えてくれるので、腰痛に効果的です。
妊娠初期から長く使えるものや、産後まで重宝するものもあるので、自分の好みにあうものを一つ持っておくと便利ですよ。
シムス体位で横になる
あまりにも痛みが強いときは、横になって休むのもいいでしょう。横になるときは、腰やお腹への負担が少ない「シムス体位」がおすすめです。
シムス体位とは、横を向いて寝転がる体位のことです。血液循環がよくなり、リラックスできる効果もありますよ。
リラキシンは分娩に必要なホルモン
リラキシンは、腰痛や恥骨痛を引き起こすというイメージが先行して、悪者のように思われがちです。しかし、お産のときに赤ちゃんがスムーズに出てくるためには欠かせないホルモンです。妊娠中は痛みがひどくて大変に思うかもしれませんが、リラキシンのおかげで分娩が進みやすくなると考えて、乗り切れるといいですね。
あまりに痛みがひどいときは、産婦人科の医師に相談したり、マタニティマッサージを受けたりするのもいいでしょう。自分にあう対処法をみつけてくださいね。