受精卵とは?細胞分裂での成長の流れや分割のスピードは?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

お腹に赤ちゃんを授かる仕組みは、学校の授業で何となく習ったものの、いざ妊活や不妊治療に取り組み始めると「受精卵はどういう風に成長するの?」と気になる人もいるのではないでしょうか。今回は、赤ちゃんの始まりである受精卵について、着床までにどのような細胞分裂や分割を経て成長していくのかをご説明します。

受精卵とは?

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受精卵とは、女性の卵子と男性の精子が出会い、融合(=受精)して生まれた細胞です。受精卵ができるまでには、女性の体内で成熟した卵子が排卵されている必要があります。

性交渉などの結果、男性から排出(=射精)された精子が、女性の腟内に入ります。精子は子宮頸管を通り、卵管の中へと進入していきます。

腟内に入った数千万~数億個の精子のうち、卵管膨大部にまで到達するのは数十~数百個ほど。それらのうち、卵子の周りを覆う透明の膜を最初に破った精子だけが、卵細胞の中に入り込み、受精することができるのです。

受精卵の卵割とは?細胞分裂を繰り返すの?

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精子と卵子の融合で生まれた受精卵も、子宮内膜に着床しないと妊娠には至りません。受精卵は時間をかけて細胞分裂を繰り返し、着床できる状態へと変化していきます。

受精卵の初期の細胞分裂を「卵割」といい、受精卵の大きさは一定のまま、細胞の数だけが増加します。

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮にたどり着き、最終的に「胚盤胞」と呼ばれる状態で子宮内膜に着床します。ここではじめて「妊娠した」と言えるわけです。着床後も細胞分裂は続き、お腹の赤ちゃんの器官が形成されていきます。

受精してから3~4週間後(妊娠週数でいうと妊娠5~6週頃)には、赤ちゃんの元になる細胞(胎芽)を覆う「胎嚢」という袋がエコー検査で確認できるようになりますよ。

受精卵の成長プロセスは?

受精卵は着床にいたるまで、以下の流れで細胞分裂を繰り返し、最終的に子宮内膜に着床します。分裂後の細胞それぞれを「割球」と呼びます。

なお、受精卵が2個以上に分裂したあと、それぞれが独立して成長していくと、一卵性双生児になります(※1)。

2細胞期(受精後 約30時間)

受精卵 細胞分裂 2細胞期

もともと1つの細胞だった受精卵が分裂し、2個の割球に分かれます。

4細胞期(受精後 約40時間)

受精卵 細胞分裂 4細胞期

受精卵が4個に分裂した状態です。割球はゆるやかに集まり、お互いの境界がはっきりしています。

8細胞期(受精後 約60時間)

受精卵 細胞分裂 8細胞期

受精卵が8個の細胞に分かれます。割球が密集しており、境界がだんだん曖昧になってきます。

なお、体外受精では、受精卵が4~8細胞に分裂した状態で子宮に戻すことを「初期胚移植」と呼びます。

桑実胚(受精後 3~4日)

受精卵 細胞分裂 桑実胚

受精卵の割球が8~16個ある状態を、見た目が桑の実に似ていることから「桑実胚(そうじつはい)」と呼びます。

割球同士の境目がいよいよ曖昧になり、まとまって見えるようになります。受精卵は、桑実胚の状態で子宮にたどり着きます。

体外受精における「桑実胚移植」は、統計データが少ないものの、初期胚移植と比べると着床率がやや高いという研究報告もあります(※2)。

胚盤胞(受精後 4~6日)

受精卵 細胞分裂 胚盤胞

これまで分裂してきた細胞が、お互いにくっつき始めて「胚盤胞」へと変化します。

胚盤胞は、細胞の外側を覆う薄い膜のような「外細胞塊」と、赤ちゃんの元となる「内細胞塊」、液体が溜まった「胞胚腔」とで形成されます。受精卵は胚盤胞の状態で子宮内膜へと着床します。

なお、体外受精で受精卵を培養し、胚盤胞になった状態で子宮に戻すのが「胚盤胞移植」です。着床可能な状態まで受精卵が育っているので、初期胚や桑実胚の段階と比べると、胚移植あたりの妊娠率は高くなります。

ただし、そもそも胚盤胞まで到達する確率が3~5割と低いため、1回の排卵あたりの妊娠率は初期胚移植とあまり変わらないといわれています(※3)。

成長した受精卵はどのように着床するの?

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排卵が起こると、女性ホルモンの働きで妊娠しやすい体の状態へと変化していきます。まず、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の作用により、子宮内膜が厚みを増します。

そして、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の作用により、子宮内膜の厚みのある状態が維持され、受精卵(胚盤胞)が着床しやすく妊娠が維持されやすい環境がつくられます。

一方、受精卵(胚)は桑実胚の状態で子宮内に到着し、胚盤胞になって着床を開始します。胚と子宮内膜から分泌される酵素によって、胚盤胞の外側を覆う「透明帯」が剥がれ、「内細胞塊」が子宮内膜にくっつきます。

やがて胚盤胞は子宮内膜の中に進入していき、完全に根を張って埋もれると「着床(妊娠)」が完了する、というわけです。

通常、受精卵が作られてから6~7日頃から着床が始まり、12日頃には着床が完了します(※3)。

受精卵の順調な成長が、妊娠に不可欠

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卵子が排卵されてから精子と融合し、受精卵となって着床するまでの流れは、本人が気づかないうちに起こっている出来事です。ほんの数週間のうちにたくさんの変化があり、この後さらに成長を続けて赤ちゃんの体になっていくと考えると不思議な気持ちですね。

普段はあまり意識しないかもしれませんが、受精から着床までのプロセスに思いを馳せてみると、赤ちゃんを授かる奇跡を再認識できるのではないでしょうか。

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