乳児ボツリヌス症とは?はちみつにボツリヌス菌がいるの?症状は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

「1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけない」と、聞いたことはありませんか?その理由は、はちみつに含まれるといわれるボツリヌス菌の芽胞が赤ちゃんの体内に入り、「乳児ボツリヌス症」を引き起こすかもしれないからです。今回は乳児ボツリヌス症について、原因や症状、治療法、後遺症が残るのかなどをご紹介します。

乳児ボツリヌス症とは?

乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の赤ちゃんがボツリヌス菌の「芽胞(がほう)」と呼ばれる菌の卵・種のようなものを、食品を通して体内に入れることで重症化する感染症です。芽胞が赤ちゃんの腸の中に入ると、発育・増殖して毒素を出すことでボツリヌス症が引き起こされます。

ボツリヌス菌自体は、大人でも激しい食中毒症状を引き起こす原因菌です。ただ、食中毒症状を引き起こすのは、食べ物の中で、すでに発育・増殖した菌の摂取によるものなので、芽胞の摂取が原因で起こる乳児ボツリヌス症とは区別して考えられます。

乳児ボツリヌス症は、生後12ヶ月未満の乳児に最も多く起こるといわれています。

乳児ボツリヌス症の原因は?はちみつにボツリヌス菌がいるの?

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ボツリヌス菌の芽胞は、大人が食べても害はありません。

しかし、1歳未満の赤ちゃんは、ミルクや母乳など栄養価の高い食事を摂ることと、腸の粘液の自浄作用が未熟で腸内環境も整っていないことから、ボツリヌス菌の芽胞が腸内で発育・増殖しやすい状況です。そのため、乳児ボツリヌス症を引き起こしやすくなっています。

主な原因食品としてははちみつがあり、コーンシロップや黒糖にもボツリヌス菌の芽胞が紛れ込んでいる可能性があります。

乳児ボツリヌス症の症状は?

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乳児ボツリヌス症になった赤ちゃんの90%が、最初の症状として、5日以上続く便秘になります(※1)。便秘以外の症状としては、以下のようなものがあります。

・母乳やミルクを飲む力が弱くなる
・泣き声が小さくなる
・顔が無表情になる
・体の筋肉が弛緩する(例:頭を支えられなくなる、手足を持ち上げない)

症状がひどい場合だと、呼吸困難や呼吸停止に陥ることもあるため、乳児ボツリヌス症が疑われるときはすぐに病院を受診してください(※2)。

乳児ボツリヌス症の診断方法は?

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乳児ボツリヌス症の診断は、赤ちゃんの便・血液のなかにボツリヌス菌が存在するかどうかで判断します。

乳児ボツリヌス症の治療法は?

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乳児ボツリヌス症の治療では、呼吸管理や輸液をして症状を軽減させる対症療法、近年では抗体を投与する集中治療を行います。症状にもよりますが、6週間前後の入院が必要になります(※3)。

米国の統計によると、乳児ボツリヌス症の致死率は1%未満となっています(※3)。

ただし、平成29年には日本において、乳児ボツリヌス症を発症した1歳未満の乳児の死亡例が報告されています(※4)。

乳児ボツリヌス症は、便秘が続く段階で早期発見し、病院できちんと治療を受ければ、後遺症もなく完治することがほとんどです(※3)。はちみつを食べてしまった場合は、すぐに受診をしておくと安心でしょう。

また、感染した赤ちゃんのうんちには、長期間に渡ってボツリヌス菌が混入することがあるので、2次感染には十分な注意が必要です。

乳児ボツリヌス症の予防法は?授乳中にはちみつを食べてはダメ?

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乳児ボツリヌス症を予防するには、1歳未満の赤ちゃんにはボツリヌス菌の芽胞が混入している可能性があるはちみつやコーンシロップ、黒糖を摂取させないことです。

ボツリヌス菌の芽胞は熱に強く、加熱調理してもなかなか死滅させることができません。厚生労働省も、「はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため満1歳まで使わない」と発表しているので、離乳食にはちみつを使うことは控えてください(※5)。

1歳を過ぎれば腸内環境が整って抵抗力がつくので、はちみつを食べられるようになりますよ。

また、赤ちゃんにおっぱいをあげているママだと「自分がはちみつを食べると、母乳を通して赤ちゃんが乳児ボツリヌス症になるのでは?」と思うかもしれませんが、ママは免疫が安定しているので、菌を取り込むことはなく、母乳へ移行することはほぼないので授乳中でもはちみつを食べることはできます。

ただし、はちみつを食べる際は、赤ちゃんが間違えて口にしないように、赤ちゃんの手が届かないところにすぐに片づけてくださいね。

乳児ボツリヌス症にさせないようはちみつに注意しよう

乳児ボツリヌス症は周囲の大人が気をつけていれば、ほとんどの場合予防できます。1歳になるまでは、日頃から赤ちゃんが口にするものは気をつけてくださいね。

特に、はちみつは市販の食品に使われていることがあるので、赤ちゃんがうっかり口にしてしまったということがないように、原材料を確認する癖をつけましょう。

万が一、1歳未満の赤ちゃんが蜂蜜を食べてしまった場合、まだ免疫力が弱いので、様子を注意深く観察しましょう。便秘が5日程度続いたり、嘔吐、哺乳低下などの症状が見られたらすぐに小児科に連れて行ってください。食後1ヶ月間は乳児ボツリヌス症の症状が現れないか注意しておきましょう。

赤ちゃんの離乳食が始まると、何かと気をつけることが多くて大変ですが、赤ちゃんの健康のためにも日頃から気を配ってあげてくださいね。

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