卵胞とは?成長速度が遅い原因と対処法は?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

生理周期に合わせた定期的な排卵は、卵巣の中で「卵胞」がきちんと成長しているからこそ起こるものです。もし卵胞の成長速度が遅いと、排卵が遅れる可能性もあります。今回は、卵胞について、発育のプロセスや、成長速度が遅いときの原因・対処法などをご紹介します。

卵胞とは?どんどん数が減っていくの?

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卵胞は、女性の卵巣の中に入っている袋状の組織で、卵細胞の周りを顆粒膜細胞などが取り囲んでいます。

卵子の元となる「原始卵胞」は、ママのお腹の中にいる胎児期に作られはじめ、赤ちゃんとして生まれたあとは、新たに作られることはありません。つまり、一生のうちに排卵される卵子の数は、生まれた時点で決まっており、そのあとは減る一方です。

原始卵胞は、胎児期のピークで約600万~700万個ありますが、生まれてくる時点では約100万個、初潮を迎える思春期には約20万~30万個まで減少します(※1)。

初潮以降、生理周期に合わせて、原始卵胞は15~20個程度ずつ同時に発育を始めます。しかし、すべての原始卵胞が排卵できる状態まで成熟するわけではなく、1ヶ月で約1,000個の卵胞が排卵されずに減少していきます。

最終的に「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」となって卵巣から排卵されるのは、毎月たったの1個だけ。一生のうちで排卵される卵子の数は約400~500個といわれています。

卵胞の成長プロセスは?排卵まで何日かかる?

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卵胞の発育周期は、女性ホルモンの「エストロゲン」によって「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」の分泌が調節されることで作り出されます。

ゴナドトロピン放出ホルモンとは、脳の視床下部で作られるホルモンで、脳下垂体で「黄体形成ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」という2つの性腺刺激ホルモンの分泌を促します。

具体的には、次のようなステップで原始卵胞から一次卵胞、二次卵胞を経て成熟卵胞になり、排卵まで至ります(※2,3)。

原始卵胞~一次卵胞

新生児期までに形成され、休止していた「原始卵胞」は、思春期になると15~20個ずつ発育しはじめます。原始卵胞が活性化されると「一次卵胞」へと成長します。

原始卵胞から一次卵胞に発育するまでにかかる期間は様々で、正確な長さははっきりしていません。この期間は、卵巣で作られるアクチビンなどの物質の作用により、顆粒膜細胞が増殖し、卵胞の発育が進みます。

一次卵胞~二次卵胞

一次卵胞は、ゆっくりと120日以上かけて「二次卵胞」へと成長します。エストロゲン濃度が一定の範囲内にある段階では、まだゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌が抑制されていて、性腺刺激ホルモン(LHとFSH)の分泌も抑えられています。

二次卵胞の後半の時期になると、顆粒膜細胞に「FSH受容体」が現れ、卵胞刺激ホルモン(FSH)に対して良く反応するようになります。卵胞刺激ホルモンには、その名のとおり卵胞の発育を刺激する働きがあります。直径5mm以上になった二次卵胞は、卵胞刺激ホルモンの作用を受けて、排卵可能な状態まで発育します。

発育した卵胞から分泌されるエストロゲンは、卵胞刺激ホルモンとともに卵胞のさらなる発育を促します。

二次卵胞~成熟卵胞~排卵

同時に発育している複数の二次卵胞のうち、最も早く発育している卵胞(主席卵胞)は、「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」になります。二次卵胞から成熟卵胞まで発育するには60日程度かかります。

成熟卵胞から分泌されるエストロゲンが急増すると、ゴナドトロピン放出ホルモンが大量分泌され、その刺激により多量の黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。この「LHサージ」が起こると卵胞の発育が完了し、排卵に至ります。

通常、一度の生理周期で排卵される卵胞は1個だけで、排卵直前の成熟卵胞の直径は15~20mmほど。そのほかの卵胞は、卵胞刺激ホルモンの低下に伴い、発育に必要な刺激を充分に受けられず、成長が止まって退縮します。

卵胞の成長速度が遅い原因は?

疑問

卵胞の発育メカニズムは解明されていない部分もあるため、「卵胞の成長が遅い・早い」原因は一口には言えません。

しかし、先述したプロセスにもあったとおり、卵胞の発育には女性ホルモンのエストロゲンの分泌が大きく関わっています。エストロゲンが充分に分泌されないと、卵胞がなかなか発育せず、排卵まで至るのが遅くなる可能性もあります。

エストロゲンは、脳の視床下部から卵巣へ指令が出ることで分泌されます。視床下部は精神的・身体的なストレスの影響を受けやすく、過度なストレスがかかると指令をうまく出せなくなってしまいます。その結果、卵巣からのエストロゲン分泌量が減少してしまいます。

また、卵巣には自律神経が分布していて、必要に応じて卵巣機能を調節しています。身体的ストレスがかかると、卵巣自律神経活動が高まり、卵巣からのエストロゲン分泌速度が減少する、という研究結果もあります(※3)。

卵胞の成長速度が遅いときの対策は?

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精神的・身体的ストレスが原因で、エストロゲンが充分に分泌されていないと考えられる場合、日常生活や仕事でかかる負荷を減らしていく必要があります。日々、ストレス解消できる趣味をもったり、適度な睡眠や運動を心がけたり、食生活を整えたりといった生活習慣の改善を目指しましょう。

また、卵巣や子宮などの機能低下が原因で、エストロゲンの分泌が足りなかったり、卵胞の発育や排卵がうまくいかなかったりするケースもあります。その場合は、排卵誘発剤を投与し、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を刺激する治療を行うこともあります。

なお、重度の排卵障害がある場合、hMG注射とhCG注射により卵胞の発育と排卵を促す「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」が選択されることもあります。

いずれにせよ、自己判断できるものではないので、排卵周期や生理周期に異変を感じたときは婦人科を受診しておくと安心です。

卵胞の成長にはエストロゲンの分泌が不可欠

精神的・身体的ストレスがあると、卵胞の発育に必要なエストロゲン分泌を妨げてしまう可能性もあります。卵胞の成長速度を完全にコントロールすることはできませんが、規則正しい健康的な生活を心がけることで、ホルモンバランスを整えていきましょう。

また、子宮や卵巣の病気が原因で卵胞の発育や排卵がうまくいかないケースもあるので、不妊に悩んだときは、なるべく早く婦人科を受診してください。

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