無月経とは?原因や症状、治療法は?無月経でも妊娠できるの?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

「月経がなかなかこないな…」と思うと「無月経」が気になりますよね。無月経はその名の通り月経がこないことをいいますが、どんな原因が考えられるのでしょうか。妊娠したい女性にとっては、無月経でも妊娠できるのか心配ですよね。そこで今回は無月経について、原因や症状、治療法のほか妊娠への影響などをご説明します。

無月経とは?

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無月経のうち、はじめての生理(初潮)を迎える年齢になる前や、妊娠中または授乳中、閉経を迎えたあとに月経がないのは自然なことで、これを「生理的無月経」と呼びます。

それ以外の性成熟期にある女性で月経がない場合、「病的無月経」といい、何らかの異常が考えられるため、場合によっては治療が必要となります。

病的無月経は次のとおり、「原発性無月経」と「続発性無月経」の2種類に分けられます。

原発性無月経

日本では平均して12歳頃に初潮が起こり、16歳だと約92%以上、18歳になると約98%以上の女性に生理があります(※1)。

そのため、18歳になっても初潮が来ない場合、何らかの病的な原因があることが考えられ、「原発性無月経」と診断されます。

続発性無月経

「続発性無月経」は、以前は継続して訪れていた月経が、何らかの理由で3ヶ月以上起きなくなった症状をいいます。

無月経の原因は?

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月経は、女性が妊娠に向けて周期的に作り出す「子宮内膜」が、妊娠が成立しなかったときに毎月1回剥がれ落ちることで起こる出血のことです。このプロセスには、様々なホルモンが関係しています。

まず、脳の視床下部で「GnRH」が作られ、その信号を受けて脳下垂体から「LH・FSH」というホルモンが分泌されることで、卵巣の中で卵胞が育ちます。

その卵胞からは「エストロゲン」が分泌され、排卵を終えた卵胞からは主に「プロゲステロン」が分泌されます。この2つの女性ホルモンの作用によって子宮内膜は厚くなり、妊娠せずに不要となった場合は子宮内膜が剥がれ落ちる、というわけです。

このように、「視床下部・下垂体・卵巣・子宮」が正常に機能し、ホルモン分泌が行われることで毎月の月経は起こりますが、これらの器官のうちどれか一つでも正常に働かないと、無月経になってしまう可能性があるのです(※1)。

さらに、原発性無月経と続発性無月経では原因や症状に違いがあるため、それぞれを詳しく見ていきましょう。

原発性無月経の原因と症状は?

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「原発性無月経」は、満18歳になっても初潮がない状態です。

染色体異常や卵巣が正常に機能しないことなどが挙げられ、月経が来ないだけでなく、乳房や陰毛など女性的な発達も遅れていることが多くあります。

また、子宮奇形や子宮頸管、腟、処女膜の閉鎖といった性器の異常が原因の可能性もあります。この場合、ホルモン分泌は正常なので、子宮に月経を起こす機能はありますが、経血がうまく流れ出ず、生理痛のような下腹部痛はある、といった症状が見られることもあります(※1,2)。

続発性無月経の原因や症状は?

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以前は月経があったにも関わらず、急に3ヶ月以上来なくなるのが「続発性無月経」です。

主な原因として、精神的なストレスやショック、ダイエットによる急激な体重減少、過度の運動、過食や拒食などが考えられます。

先述のとおり、「視床下部・下垂体・卵巣・子宮」が正常に機能しないと生理が止まってしまいますが、最初の信号を出す視床下部はストレスなどによって機能障害を起こしやすいのです。

また、下垂体の機能を低下させる「シーハン症候群」や、卵巣機能不全につながる「多嚢胞性卵巣症候群」、子宮に炎症を起こす「子宮内膜炎」などの病気も、続発性無月経の原因となります。

そのほか、過去の摘出手術や抗がん剤・放射線治療などの影響で、卵巣や子宮がダメージを受けてしまうと、続発性無月経を引き起こすことがあります。

続発性無月経は、月経が止まること以外は自覚症状がないことがほとんどですが、生理周期が長くなる「稀発月経」の段階を経ているケースが約20%あります(※1)。

無月経を引き起こす高プロラクチン血症とは?

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無月経を引き起こす原因の一つに、脳下垂からプロラクチンというホルモンが過剰分泌される「高プロラクチン血症」という病気があります。

プロラクチンは、授乳期に母乳をつくり、同時に排卵が起こらないように抑制する働きを持ちます。

しかし、下垂体の腫瘍や甲状腺の機能障害が原因で、妊娠・出産・産後以外の時期にプロラクチンが過剰分泌されると、排卵障害となり、無月経を引き起こすことがあるのです(※2)。

高プロラクチン血症を起こしている場合には、妊娠・授乳中ではないのに母乳が分泌されることがあり、「乳汁漏出無月経症候群」と呼ばれることもあります。

無月経でも妊娠できるの?

妊婦

月経が来ないと、妊娠できるのかどうか心配になりますよね。妊娠は、卵子が精子と受精しなければ成立しないので、そもそも排卵が起こっていなければ妊娠することはできません。

「原発性無月経」の場合、治療によって排卵を誘発することができれば、将来は妊娠できる可能性があります(※1)。

「続発性無月経」のうち、ホルモン分泌に特に異常がなく、子宮内膜炎など子宮にのみ無月経の原因がある場合は、排卵自体は正常に起こっています(※2)。

しかし、大半の原因は視床下部や下垂体、卵巣の機能不全で、ホルモン分泌に異常があるため、続発性無月経のまま妊娠を目指すことは難しくなります。

原因を突き止め、それに応じた治療を行い、正常な排卵が起こるようになれば、妊娠できる可能性が高まります。

無月経の治療法は?

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無月経の治療はそれぞれの原因に応じて行われます。

正常に排卵が起こっていないときは、ホルモン剤の投与によって排卵を促し、月経を再開させるホルモン療法が行われます。

病気が原因で無月経を引き起こしているときには、その病気を治療する必要があります。たとえば、高プロラクチン血症が原因のときはプロラクチンの産生・分泌を抑える薬などで治療を行います。

そのほか、ストレスをためない生活を送る、きちんとした睡眠時間を確保する、適正な体重に戻すなど、生活習慣の改善で無月経が改善されることもあります。

無月経の治療には漢方も効く?

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月経不順や無月経などの月経異常を解消するために、漢方を利用する女性も多くいます。

東洋医学では、月経に関するトラブルは特に「血(けつ)」の要素が大きく関係していると考えます。たとえば次のような漢方薬を処方されることがあります(※3)。

● 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
● 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
● 温経湯(ウンケイトウ)

市販薬としても様々な漢方薬が販売されていますが、はじめて利用するときには専門の漢方医のいる漢方薬局や、漢方を取り扱っている産婦人科で相談しましょう。

同じ「無月経」であっても、その人の体質やほかの症状などによって異なる薬が処方されることもあります。

無月経は放置せずに、婦人科を受診しよう

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無月経の症状を放置して月経がない期間が長くなるほど、卵巣などの機能が低下してしまい、妊娠しにくくなってしまう可能性もあります。妊娠中や産後、授乳中を除いて、3ヶ月以上月経がない場合には、早めに婦人科医に相談してくださいね。

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