「臨月に体重増加が止まらない!」と悩む妊婦さんは多くいます。特に、妊娠初期から中期にかけて食べつわり(食べないと気持ち悪くなるつわり)の症状があった妊婦さんは、体重が増え続けたまま臨月を迎えやすいものです。今回は臨月の体重増加の目安と、増えすぎた場合の食生活や生活習慣の見直し方についてご紹介します。
臨月に体重が増えやすい理由は?
臨月に体重が増加しやすい主な原因は、妊婦さんの体の変化にあると考えられています。
運動不足になる
臨月はお腹が重くなるため、家事が思うようにできず、歩くスピードもゆっくりになります。また、大きなお腹を抱えて動くこと自体が億劫になりがちです。
こうしたことから、臨月は運動不足になって、体重が増えやすくなるのです。特に、仕事をしていた妊婦さんは産休に入ると、通勤がなくなることで運動量が急激に減ってしまいます。
食欲が出て食べ過ぎてしまう
臨月で出産間近になると赤ちゃんが子宮の下の方へ下がるため、胃への圧迫感が弱くなって食欲が増してきます。テレビやスマートフォンを見ながら、ついついお菓子に手を伸ばしてしまう、なんていう人も。急激な体重増加を防ぐために間食や食べ過ぎには気をつけましょう(※1,2)。
臨月の体重増加の目安は?
妊娠中の適正な体重増加量は、妊娠前の体格指数(BMI)によって異なります。日本産婦人科学会が提示している、妊娠中の体重増加の目安は以下のとおりです(※2)。
現段階でオーバー気味だったり、最近急に体重が増えてきたと感じたりした場合は、食生活の見直しや適度な運動を意識しましょう。
ただしこれらの数字はあくまで目安であり、この数字より多かったり少なかったりするからといって自己判断で心配しすぎず、医師や助産師に相談してみてください。
妊娠の状況や個人の体質によっても異なるので、かかりつけの医師の指導に従うようにしましょう。
臨月に体重が増えすぎると、どんなリスクがある?
「体重が増えるのはエネルギーが蓄えられている証拠だから、むしろ増えすぎるぐらいが、ちょうどいいのでは?」と思う人もいるかもしれません。ただし、臨月に体重が増えすぎると、以下のようなリスクを伴います(※1,2)。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、高血圧による頭痛やむくみを引き起こします。妊娠高血圧症候群になると、様々な合併症を引き起こすリスクが高まり、出産予定日より前に赤ちゃんを産まなくてはいけなくなる可能性もあります。
妊娠糖尿病
食べ過ぎたからといってすぐに妊娠糖尿病になるわけではありませんが、血糖値が高いと診断されている人は気をつけてくださいね。
赤ちゃんの血糖値が低くなる新生児低血糖症などのリスクが高まり、食事療法で血糖値を下げられない場合にはインスリンを投与しなければいけない場合もあります。
難産
体重が増えすぎると、産道にお肉がつき赤ちゃんが通る道が狭くなることで微弱陣痛の可能性が高まり、分娩に時間がかかってしまったり、赤ちゃんと胎盤が体外に出たあとも出血が止まらない「弛緩出血」になったりすることもあります。
巨大児
臨月だけにいえることではありませんが、妊娠中の体重増加が過剰な場合、お腹の赤ちゃんが巨大児(出生体重が4,000g以上)となるリスクや、赤ちゃんが在胎週数の平均値よりも大きく産まれるリスクが高まります。
巨大児や赤ちゃんが在胎週数よりも大きく産まれると、成人後の肥満や糖尿病発症のリスク因子であることも報告されています。
臨月に体重増加しすぎた!どうすればいい?
先にも述べたとおり、臨月で体重が増えすぎたからといって、必ずしも問題になるわけではありません。
妊婦さんの妊娠前の体格指数(BMI)によって異なるため個人差がありますが、場合によっては、医師から体重増加を抑えるように指導を受けることがあるかもしれません。
臨月にできる、体重の増加を抑える方法としては、以下のものがあります。ただしくれぐれも無理はしないでくださいね。
食事に気をつける
天ぷらや唐揚げといった油もの、ケーキやアイスクリームといった甘いものは、できるだけ控えるようにしましょう。そして、バランスよく栄養を摂取しながら、海藻類やキノコ類などの低カロリーの食べ物を積極的に食事に取り入れてみてください。
ただし、過度に食事の量を減らさないことが大切です。食事制限をしてしまうと、お腹の赤ちゃんに届く栄養が少なくなるだけでなく、妊婦さん自身が貧血といった体調不良になってしまう恐れがあります。
夜遅くに食べるのも注意が必要です。夕飯はできるだけ早く済ませたり、どうしても食べたいときは甘いものやカロリーの高いものは朝やお昼に食べるようにしましょう。食事を記録する「レコーディング」もお勧めです。
適度に運動する
臨月に入ってからできる運動としては、散歩、マタニティヨガ、マタニティスイミング、スクワットがあります。そのなかでも、特におすすめなのが散歩とスクワットです。
散歩は自分のペースで無理なくできるうえに、外の景色が楽しめて、気分転換になります。体調に合わせて、自宅近くを30~40分ゆっくりと歩くだけでも効果的ですよ。
スクワットは、子宮や膀胱を支えている骨盤底筋を鍛えることができ、安産効果があります。お腹が大きくバランスを崩しやすいため、手すりや机などを支えにして行いましょう。
妊娠中に運動で体重を減らすのは難しいですが、体重増加をできるだけ適正にするため、お産に向けて体力をつけるため、また陣痛が早く来るためにも、体調がいいときはできる範囲で運動をするようにしてくださいね。
毎日体重を計る
毎日体重を計っていると、体重の増え方を把握することができます。急激に増えたと感じたら医師に相談してみましょう。
また、体重への意識が高まり、余分な間食を減らせたり、運動への意欲を上げたりすることができます。アプリや手帳を使って、体重の変動を記録してみましょう。
臨月も体重が増えすぎないように体を整えて
「過度に体重が増えると出産時のリスクが高まる」と聞くと、少し不安に感じるかもしれません。
しかし臨月であれば、体重増加量を意識しながら、出産に向けて体の調子を整えることが大切です。出産まであと少し、心身ともに健康な状態で出産を迎えられるといいですね。