女性ホルモンの「エストロゲン」とは?どんな作用や働きをするの?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は、女性が妊娠・出産するためになくてはならないホルモンです。妊娠を希望して妊活を進めているときや生理不順に困っているとき、エストロゲンの働きによって症状が解消されることもありますよ。今回は、エストロゲンとは何か、妊娠や生理に対する作用などをご紹介します。

エストロゲンとは?

若葉 芽

エストロゲンとは女性ホルモンの一つで、卵胞ホルモンとも呼ばれます。エストロゲンの分泌の仕組みは、下記のとおりです。

エストロゲン分泌の仕組み

脳の視床下部から脳の下垂体を刺激するホルモンが分泌されると、下垂体が反応して卵胞刺激ホルモンを分泌します。すると、それに卵巣が反応し、卵巣の中で眠っている原始卵胞のうちの15~20個が成長を始めます(※1)。

卵胞の成長が進むにつれて、発育した卵胞からエストロゲンが分泌されます。

エストロゲンの働きは?

エストロゲンの働きには、以下のようなものがあります(※1)。

● 女性らしい丸みをおびた体をつくる
● 受精卵の着床を助けるため子宮内膜を厚くする
● 精子が子宮の中に入りやすいよう頸管粘液の分泌を促す
● 骨の形成を促し、血管収縮を抑制する

妊娠や出産だけでなく、女性らしさを高めてくれるホルモンとして、肌や髪質を良くしてくれるともいわれています。

エストロゲンは生理にどう作用する?分泌量は変化する?

基礎体温表 グラフ 女性ホルモン エストロゲン プロゲステロン

エストロゲンの分泌量は、生理の終わり頃から徐々に分泌量が増え、排卵直前にピークを迎えます(※1)。排卵が過ぎるとエストロゲンの分泌量が一度急激に減少しますが、もうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌とともに、少し量が増えます。

その後、生理が始まる少し前にまた減少し、生理が終わると徐々に分泌量が増えていくというサイクルを繰り返します。

排卵が起こったあと、女性の体では妊娠の準備のために子宮内膜を十分な厚みにする必要があります。そのときに活躍するのが子宮内膜を厚くする作用があるエストロゲンで、排卵のタイミングには受精卵が着床できるよう、排卵前から子宮を整えているのです。

エストロゲンの働きは、妊娠中と産後にも関係があるの?

妊婦

受精卵が着床して妊娠が成立すると、エストロゲンの分泌量は徐々に増えていき、出産まで増え続けます。

このとき、妊娠を持続させるために子宮に流れる血液の量を増やしたり、乳房の中に通っている乳管を発達させて母乳を作る準備を整えたりしています(※2)。

出産すると、胎内で赤ちゃんを育てる必要がなくなるため、急激にエストロゲンの分泌量が減ります。エストロゲンの分泌量が減ると体内のホルモンバランスが乱れ、産後うつや抜け毛、肌荒れなどが見られることがあります。

エストロゲンの働きを最大化するには?

豆腐

女性にとって重要なエストロゲンの働きは、食べ物やサプリメント、ツボ押しや漢方によって、ホルモン量を増やしたり、ホルモンの働きを促したりすることで最大化することができます。

おすすめの食べ物には納豆・豆腐・おから・味噌・油揚げなど大豆由来の食べ物があります。

これらの食品はエストロゲンに似た分子構造の「大豆イソフラボン」を含んでいるため(※3)、これらの食品を摂ると、エストロゲンが分泌されているときに近い状態が体に現れます。

また、卵巣機能の低下によって不妊治療が必要なときに、ホルモン剤によってエストロゲンを外から補充することもあります。

他にも、手の親指と人差し指の間にある合谷(ごうこく)と呼ばれるツボや、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」といった漢方薬には、ホルモンバランスを整える働きがあると考えられています。

エストロゲンの働きが強いと副作用もあるの?

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エストロゲンは女性の体になくてはならないホルモンですが、ホルモン剤やサプリメントで過剰に摂取すると、副作用が出る可能性があります。

さらに、エストロゲンを長期間投与し続けると、子宮内膜が増殖し続け、子宮体癌のリスクが高まるとされています(※4)。

サプリメントであれば使用上の注意を良く読んでから服用し、ホルモン剤による治療では、産婦人科医と相談し、指示に従って利用するようにしてくださいね。

エストロゲンの減少で更年期障害が起きる?

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女性ホルモンは、女性としての機能の成熟が始まる思春期にその分泌が盛んになりますが、エストロゲンは45歳前後から分泌量が減少します(※1)。その理由は卵巣内の卵胞の数が減少していくためです。

排卵後の着床に向けて子宮内膜を厚くするエストロゲンは、卵胞の成長に伴って分泌されるので、卵胞が少なくなることでエストロゲンの分泌量が減少していきます。

脳の視床下部は変わらず下垂体を刺激してエストロゲンの分泌を促しますが、卵巣が機能低下によってそれに応えることが難しくなります。そのため、視床下部が混乱して自律神経を乱し、更年期障害の症状が見られるようになります。

更年期障害では、主に以下のような症状が心身に表れます(※1)。

● 動悸やのぼせ、頭痛、肩こり
● イライラや憂うつ感
● 手足の冷え
● 骨粗しょう症のリスク増大
● 排尿障害、頻尿

エストロゲンの作用が女性らしさをつくる

女性

エストロゲンは女性の体の機能と健康に大きく関わり、重要な働きをしているホルモンです。

エストロゲンが正常に分泌されなくなると、生理がある時期は生理不順や排卵障害を引き起こして不妊につながり、分泌量が急激に減少する更年期以降は骨粗しょう症や動脈硬化など、それまで縁遠かった病気にかかりやすくなります。

20~30代のうちは、暴飲暴食や不規則な生活、運動不足を繰り返してエストロゲンの分泌に影響が出ても、体力があるので多少の無理はききますが、中年期以降だと心身のトラブルを引き起こす可能性は十分にあります。

「今は何ともないから大丈夫」と考えるのではなく、いつかは必ず来るエストロゲンの分泌量が減少する時期を見据えて、生活習慣の改善やセルフケアを心がけていきましょう。

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