卵子凍結保存の費用や流れは?年齢や保存期間の上限はある?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

晩婚化・晩産化が進んだこともあり、将来に備えて「卵子凍結保存」を選択する女性が増えています。以前は、不妊治療中の既婚女性や、子宮がんの治療などで健康な卵子を維持できない女性にのみ認められていましたが、2013年に日本生殖医学会は「健康な未婚女性であっても、年齢による卵巣機能の低下が心配されるときは卵子凍結保存も認める」という旨のガイドラインを発表しました(※1)。今回は、卵子凍結保存の流れや費用、年齢、妊娠確率などについてご紹介します。

卵子凍結保存とは?

凍結 氷

卵子凍結保存とは、女性の体内から採取した卵子を凍らせて長期間保存しておくことです。

日本生殖医学会が2013年に発表したガイドラインによると、卵子凍結できるケースは主に2つに分けられます。

一つは、子宮がんなどの治療により、卵巣機能が低くなる恐れがある場合の「医学的適応」、もう一つは、不妊治療中の女性や健康な未婚女性が、将来の妊娠・出産に備えて若いうちに卵子を残しておくための「社会的適応」です(※1)。

凍結保存した卵子は、解凍後に体外受精や顕微授精を行い、女性本人にその受精卵を移植して妊娠を目指すことになります。

卵子凍結保存は「卵活」の一つ?

女性 お腹 子宮 

卵子凍結保存は、がん治療などによって卵子が作れなくなってしまう恐れのある女性や、加齢によって将来不妊になる可能性を心配する女性にとって、できるだけ若い卵子を残しておくことができる選択肢の一つです。

近年では、晩婚化・晩産化が進んでいる背景もあり、「今は妊娠を望まないが、将来妊娠を希望したときのために、若いうちに卵子を採取して未受精のまま凍結する」というケースも見られます。妊娠のために活動する「妊活」の前段階として、「卵活」と呼ばれることもあります。

卵子は年齢が上がるにつれて老化するため、妊娠の確率が下がり、流産や染色体異常などが起こりやすくなります(※2)。そのため、若いうちに卵子凍結保存を希望する女性もいるのです。

ただし、日本生殖医学会のガイドラインはあくまでも指針を示すものであり、卵子凍結によって妊娠・出産の時期を遅らせることを推奨するものではありません。

卵子凍結保存の方法は?

病院

卵子凍結保存とその後の妊娠までの流れは、簡単にまとめると下記のとおりです。

1. 排卵誘発剤などを使い、排卵された卵子を採取する
2. 採卵された卵子のうち、成熟卵を超低温の液体窒素で凍結保存する
3. その後、妊娠を望むときに卵子を解凍して体外受精や顕微授精を行う
4. 受精がうまくいったら、女性の子宮に受精卵を移植する

なお、卵子の生存率やその後の着床率を考えると、複数の卵子を凍結保存した方が妊娠できる確率は高まりますが、一度に何個の卵子を保存するかについては、女性の体の状態や医療機関の方針によって異なります。

卵子凍結保存による妊娠率は?

年齢別の生殖補助医療(ART)の成績

凍結保存していた卵子は、パートナーを得て、妊娠を希望するタイミングで解凍し、体外受精や顕微授精を行うことになります。

米国生殖医学会(ASRM)は、凍結保存卵子と新鮮卵子を比較したときに、その受精率や出産率には差がない、という見解を示しています(※3)。

ただし、そもそも体外受精や顕微授精による妊娠率・生産率(赤ちゃんが無事に生まれる確率)は、上のグラフのとおり年齢とともに下がっていきます(※2)。

つまり、若いうちに卵子凍結保存をしたからといって、妊娠率が上がるといえるわけではありません。日本生殖医学会は「35歳までには妊娠・分娩を行うことが望ましい」としています(※4)。

卵子凍結保存ができる年齢や保存期間は?

本 ノート

未婚女性の卵子凍結保存を行っている医療機関もあります。また、凍結保存をしておける年齢や期間の上限は、施設によって異なります。

日本生殖医学会のガイドラインには、「卵子を凍結保存できるのは成人した女性」、「卵子の採取は40歳未満まで」、「凍結保存した卵子を体外受精などで使うのは45歳未満まで」としており、特に未婚・既婚を区別していません(※1)。

日本産科婦人科学会は、「卵子の凍結保存期間は採卵した女性の生殖年齢を超えないこと」とする見解を示しています(※5)。

つまり、卵子凍結保存ができるのは閉経が起こるまで、あるいは45歳未満までというのが一般的な考え方といえます。

卵子凍結保存の費用は?

お金

卵子凍結保存にかかる費用は、保存しておく卵子の個数や期間、病院の方針などによっても異なります。下記は一例ですが、いずれも保険適用の対象外となります。

● 排卵誘発、事前検査など:30,000円~
● 採卵:60,000円~
● 卵子凍結:30,000円~
● 卵子保存:20,000円~/年
● 卵子解凍:20,000円~

また、凍結した卵子を融解し、体外受精や顕微授精を行うには1回あたり30~50万円程度かかります。卵子凍結保存をする際は、長期的に費用がかかることを覚えておきたいですね。

卵子凍結保存のメリットは?

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卵子凍結保存には、次のようなメリットがあります。

● がん治療をする前に卵子保存することで、妊娠の可能性を残せる
● 採卵を毎回行う必要がなく、身体的・精神的負担を軽減できる
● キャリア継続など個人の事情によって妊娠・出産時期を調整できる
● まだ相手がいなくても妊娠しやすい若い卵子を保存できる

卵子凍結保存のデメリットやリスクは?

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卵子凍結保存には、次のようなデメリットやリスクもあります。

● 多額な費用がかかる
● 健康な卵子を保存していたとしても、妊娠率が上がるとはいえない
● 排卵誘発による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがある
● 採卵するときの麻酔の副作用や、針による出血や感染リスクもある
● 妊娠を先送りして年齢が上がると、出産リスクが増える

卵子凍結保存は選択肢の一つ

高齢 夫婦 カップル ハグ

キャリア形成や結婚、妊娠のタイミングなど、後悔が残らない選択をしたいという気持ちは、多くの女性が共感できるのではないでしょうか。

卵子凍結保存は、いま現在パートナーがいるかどうかに関係なく、将来の選択肢を残すための一つの方法です。メリットとデメリットの両方を踏まえて、医師と相談のうえ慎重に検討してください。

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