排卵誘発剤の副作用は?効果やリスク、排卵のタイミングは?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

女性側の不妊には様々な原因がありますが、排卵がされていなかったり、そもそも卵胞がきちんと発育していなかったりすることもそのうちの一つです。このような排卵に関する障害に対して使われるのが、「排卵誘発剤」です。今回は、排卵誘発剤の効果や副作用、リスク、使用したあとに排卵が起こるタイミングなどをご説明します。

排卵誘発剤とは?

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排卵誘発剤は、名前のとおり排卵を促すための薬です。

不妊の原因のうち、生理は来ているものの排卵していない「無排卵月経(無排卵周期症)」や、卵胞の発育を妨げる「黄体機能不全」など、排卵障害が見られる場合に使用されるのが一般的です。

また、排卵が正常に行われている場合でも、体外受精などのために多くの卵子を採る目的で、排卵誘発剤が使用されることがあります。

排卵誘発剤は、不妊治療などで効果を発揮する一方、副作用やリスクもあるので、それらを踏まえたうえで適切に使用することが大切です。

排卵誘発剤には、注射と飲み薬があるの?

排卵誘発剤には、飲み薬(内服薬)と注射薬があります。

飲み薬(内服薬)

飲み薬のなかで最もよく使われるのが、「クロミッド(クロミフェンクエン酸塩)」という内服薬です。

クロミッドは脳の視床下部に作用して、下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体刺激ホルモン)の分泌を促します。この2つのホルモンが分泌されることで卵胞が成熟し、排卵が促されます。

飲み薬による排卵誘発は手軽で、副作用が比較的少ないという特徴があります。

注射薬

一方、注射薬には「hMG製剤」や「FSH製剤」、「hCG」などがあります。これらを筋肉注射や皮下注射で投与することで、卵巣を直接刺激し、より高い妊娠率を得ることができます。

ただし、注射による排卵誘発は注意すべき副作用の頻度が高くなるため、慎重に使う必要があります。

排卵障害がそれほど重くない場合や、タイミング療法を行う場合は、まずクロミッドを試し、それでもあまり効果が出ない場合は注射による排卵誘発に切り替えていくのが一般的です。

排卵誘発剤の効果は?排卵・妊娠の確率は?

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排卵誘発剤には、脳の視床下部や下垂体、卵巣などに働きかけてホルモン分泌を促すことで、卵胞の発育や排卵を誘発する効果があります。

排卵誘発の方法は、主にクロミッドなどの飲み薬を使う「クロミフェン療法」と、hMG製剤などの注射薬を用いる「ゴナドトロピン療法」の2種類があり、それぞれ排卵率・妊娠率が異なります。

クロミフェン療法では、ある程度エストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されており、子宮内膜が増殖している「第一度無月経」の排卵率は60~70%、排卵がまったくない「無排卵月経」の排卵率は80~90%で、妊娠率は25~30%ほどです(※1)。

一方、ゴナドトロピン療法による排卵率は70~80%、妊娠率は30~40%とクロミフェン療法よりも高いですが、流産率もやや高い傾向にあります(※1)。

排卵誘発剤を使うタイミングは?

カレンダー

排卵誘発剤を使うのに適したタイミングは、薬の種類や患者の症状によって異なります。

一般的に、クロミフェン療法の場合は、クロミッドなどの飲み薬を生理5日目から5日間、1日1〜3錠ずつ、服用します。

また、ゴナドトロピン療法では、まず生理3~6日目から連日、hMG製剤やFSH製剤を注射で投与します。そのあと超音波検査で卵胞の成長具合をみて、産婦人科医がタイミングを見計らってhCGを投与し、排卵を誘発します。

できるだけ高い確率で排卵を促すには、正しいタイミングで適量の誘発剤を投与する必要があります。医師の指示に従い、正しく使うようにしましょう。

排卵誘発剤を使った後の排卵日はいつ?

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できるだけ妊娠率を上げるポイントは、「排卵と性行為のタイミングを合わせること」です。うまく排卵できたとしても、精子と受精できなければ妊娠は成立しません。

不妊治療中の人は特に、誘発剤を使ったあと、いつ排卵が起こるかを把握しておきたいですよね。

最もよく使われるクロミッドの場合、すべての薬を飲み終わって7〜10日後に排卵が起こるのが一般的とされています。ただし、卵胞が発育するスピードや排卵のタイミングには個人差があるので、基礎体温などとあわせて排卵日を予測する必要があります。

クロミッドを飲み終わったあと、基礎体温がガクッと下がるタイミングがあり、その前後2~3日間に排卵が起こると考えられます。

もっと確実に排卵日を予測するには、排卵検査薬を使ったり、病院の超音波検査で卵胞の大きさを測ってもらったりするなどの方法もあります。

排卵誘発剤には副作用やリスクもある?

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排卵誘発剤は排卵が促進できる不妊治療には効果のある薬ですが、下記のような副作用やリスクがあります(※2)。

そのため、副作用が見られたときには投薬を中止したり、より効き目が穏やかな排卵誘発剤に切り替えるなど、重症化を防ぐ必要があります。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

ゴナドトロピン療法は、クロミフェン療法と比べて高い妊娠率が得られる一方、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」を引き起こすリスクも高まります。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、排卵誘発剤によって刺激された卵巣が大きく腫れることにより引き起こされます。

重症になると腹水や胸水が溜まったり、脳や肺の血管がつまることで脳梗塞や肺塞栓症が起きたりすることもあり、命に危険が及ぶこともある重い副作用です。

特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療で排卵誘発を行ったあとに起こりやすいので、注意が必要です。

多胎妊娠

薬によって人工的に排卵を誘発するため、複数の卵子が排卵される可能性があります。そのため、排卵誘発剤を使わなかった場合と比較すると、双子以上の多胎妊娠になる確率がやや高くなります。

多胎妊娠の場合、早産となる可能性が高くなるので注意が必要です。早い週数での出産となると、赤ちゃんに何らかの後遺症が残ったり、ママにも妊娠高血圧症候群などの合併症が起きたりする確率が上がります。

子宮内膜が薄くなる・子宮頸管粘液が少なくなる

クロミフェン療法の場合、子宮内膜が薄くなり、受精卵の着床率が下がることがあります。また、子宮頸管粘液が減ることで、精子が子宮までたどりつきにくくなり、受精率が下がることも。

そのため、排卵効果の高さと比べて妊娠率はそれほど高くありません。

排卵誘発剤の副作用と効果を踏まえて判断しましょう

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排卵誘発剤は、排卵障害のために不妊で悩んでいる女性にとって、心強い薬です。ただし、副作用やリスクがあることも理解したうえで、産婦人科医とよく相談して治療方針を決めてくださいね。

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