新型出生前診断のNIPTとは?染色体検査をするの?検査方法や時期、費用は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

「NIPT」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。妊婦さんの血液を採取して、赤ちゃんに染色体異常の可能性があるかどうかを調べる検査です。

今回はNIPTについて、どんな病気の可能性を検査できるのか、受けられる時期、費用などをご説明します。

新型出生前診断(NIPT)とは?

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「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)」は出生前検査(出生前診断)のひとつです(※1)。通常の妊婦健診の検査とは異なり、希望した人のみが遺伝カウンセリングを経たうえで受けることが推奨されています。

赤ちゃんは誰でも3〜5%の割合で生まれつきの病気をもって生まれてくる可能性がありますが、NIPTではそういった病気のうち、一部の染色体異常の病気の可能性を調べることができます(※1,2)。

出生前検査には他にも種類があり、「非確定的検査」と「確定的検査」にわけられます(※3)。

NIPTは非確定的検査の一種で、結果はあくまでも確率であり、赤ちゃんに病気があるという確定診断にはなりません。

NIPTで可能性がわかる病気は?検査方法って?

採血 血液検査 

NIPTによって可能性が調べられる染色体の病気は、以下の3つです(※1)。

● ダウン症
● 18トリソミー
● 13トリソミー

上記以外の染色体の病気全般を調べるには、確定的検査である「羊水検査」や「絨毛検査」を受ける必要があります(※3)。

NIPTは、採血によって検査を行います(※1)。

妊婦さんから採取した血液のなかには微量のDNA断片があり、その約10%は胎盤に由来します。胎盤は受精卵から発生していることから、DNA断片を分析することで、胎児に特定の染色体異常がないかどうかがわかります。

NIPTはいつから受けられる?実施している施設や費用は?

カレンダー 日付 期間

NIPTは、妊娠9~10週以降に受けることができます(※1)。採血後、結果が出るまでには1〜2週間かかります。

NIPTの検査にかかる費用は病院によって異なりますが、10万円弱~20万円かかることが多いです(※1)。健康保険は適用されないため、全額自己負担となります。

NIPTの判定の出方は?陽性だったら?

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NIPTの検査結果は、ダウン症・18トリソミー・13トリソミーそれぞれに対して、「陽性」「陰性」「判定保留」のいずれかで示されます。

陽性

赤ちゃんが病気を持っている可能性が高いということになります(※1)。

実際には病気でない偽陽性の場合もあるため、確定診断をするためには確定的検査の羊水検査や絨毛検査が必要となります。

なお、NIPTで検査できるダウン症に関しては、「陽性」と判定が出たケースのうち実際にダウン症である確率は比較的高いとされています。

陰性

99.99%以上の確率で赤ちゃんが病気を持っていないということになります。(※1)そのため、その後の確定的検査は行わないことがほとんどです。

ただし、10,000人に1人以下の割合で、実際には病気を持っている「偽陰性」が起こることがあります。

判定保留

ごく稀に、血液中のDNA断片が足りないなど何かしらの原因によって、検査結果が出ないことがあります(※1)。

この場合は、遺伝カウンセリングで相談をして、「再度NIPTを行う」「NIPTでの検査はあきらめる」「羊水検査を行う」などの選択をします。

NIPTを受ける際に確認しておくべきことは?

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新型出生前診断(NIPT)のメリットとして、次の2点が挙げられます。

NIPTを受けるかどうか検討する際には、以下のことをしっかり確認しておきましょう。

どこで検査を受けるか

NIPTは、どこの産婦人科でも実施しているわけではありません。実施しているところを探す際には、「出生前検査認証制度等運営委員会」に認証されている施設を参考にすると良いでしょう。

認証されていない施設では、事前の遺伝カウンセリングや陽性と判定された後の相談などが十分にできないことがあり、注意が必要です。※ NIPTの認証医療機関はこちら

結果が陽性だったらどうするか

NIPTの結果が「陽性」だった場合、羊水検査や絨毛検査を受けるかどうかを考える必要があります。

羊水検査や絨毛検査では、赤ちゃんの染色体異常がほぼ100%の確率でわかりますが、お腹に針を刺す必要があるため、母体と胎児に負担がかかります。

日本産科婦人科学会の産科ガイドラインによると、羊水検査に伴う流産のリスクは約0.3〜0.5%、絨毛検査の場合は約1%とされています(※4)。

3つの病気以外はわからない

NIPTで可能性が検査できるのは、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーの3つだけなので、赤ちゃんが他の病気を持っていたとしても調べることはできません。

NIPTを受けた妊婦さんと赤ちゃんのその後を調査した報告によると、結果が陰性だった約6万件のうち、4%にあたる2,370件には、ダウン症、18トリソミー、13トリソミー以外の他の病気があったことがわかっています(※5)。

別の調査報告では、NIPTを受けた約10万件のうち、結果が陽性だったのは1.8%にあたる1,827件でした(※5)。

つまり、NIPTによってダウン症や18トリソミー、13トリソミーの可能性が見つかった人より、その後に、他の病気がわかった人の方がたくさんいるということがわかります。

こういった理由を含めて、出生前検査認証制度等運営委員会では、NIPTを受ける際には十分な説明と遺伝カウンセリングを受けることが不可欠だとしています(※6)。

NIPTのことをよく理解したうえで受けるかどうか検討を

「高齢出産である」「過去に染色体異常のある赤ちゃんを妊娠した」などの理由で、NIPTを受けたという妊婦さんは多くいます。また、高齢出産ではなくても「もし赤ちゃんに病気があるなら生まれる前に知っておきたい」などの理由で、NIPTを検討している妊婦さんもいるかもしれません。

NIPTは確定的検査ではないということを十分理解したうえで、結果が陽性だった場合や費用のことなども含めて医師やパートナーとよく相談し、遺伝カウンセリングをしっかり受けてから、実際に検査をするかどうか決めていけるといいですね。

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