高齢出産のリスクは?年齢は何歳から?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

「高齢出産にはリスクがある」と耳にすることも多いと思いますが、具体的にはどんなリスクがあるのでしょうか。

今回は、高齢出産の定義は何歳からなのか、母体と胎児へのリスクなどについてご紹介します。

高齢出産とは?何歳から?

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日本産科婦人科学会の定義では、35歳を過ぎてからの初めての妊娠のことを「高齢妊娠」といいます(※1)。「高齢初産」「高齢出産」と呼ぶこともあります。

経産婦については、2人目以降でおおむね40歳以上になると、妊娠・出産時のリスクが高まるといわれています。そのため、経産婦では40歳以上の出産を広く「高齢妊娠」「高齢出産」といいます。

2021年の調査によると、全分娩に対して、35〜39歳の分娩は約24%、40歳以上の分娩は約6%でした(※2)。2010年では、35〜39歳は約20%、40歳以上は約3%であったことから 、出産年齢の高齢化が進んでいることがわかります(※3)。

高齢妊娠・高齢出産のリスクとは?

妊娠・出産時の年齢が上がるにつれてリスクが高まるのは避けられないことです。体重管理や禁煙など、自分自身でできることから実行していくことが大切ですが、リスクを知っておくことで早期対応につなげることができます。

ここでは、代表的な6つのリスクをご紹介します。

1.妊娠できる確率が下がる

個人差はありますが、年齢を重ねると精子や卵子の働きが弱くなり、受精や着床が難しくなります。

25~29歳では不妊の確率が8.9%なのに対し、30~34歳では14.6%、35~39歳は21.9%、40~44歳では28.9%と、30歳から自然に妊娠する確率が減っていることがわかります(※4)。

年齢別の生殖補助医療(ART)の成績

また、上のグラフのように体外受精などの妊娠率も、20代は41.5%なのに対し、35~39歳では32.0%、40~44歳で18.9%、45歳以上で5.4%というデータがあります(※5)。年齢が上がるにつれて、不妊治療の成功率も下がります。

このように高齢になると妊娠しにくくはなりますが、全く妊娠ができないわけではありません。前述の通り、全分娩に対する40歳以上の分娩の割合は年々増加しています。

2. 赤ちゃんに染色体異常がみられる確率が上昇する

高齢出産では、赤ちゃんにダウン症などの染色体異常がみられる可能性が、少しずつ上昇します。

例えば、ダウン症の発症率は、25歳の出産では1,351人に1人なのに対し、30歳では909人に1人、40歳では112人に1人と、高年齢になるにつれて高くなります(※1)。

染色体異常が起こる原因はさまざまですが、卵子や精子の老化もその一つです。特に女性は、生み出せる卵子の数が生まれたときにすでに決まっており、年齢を重ねるにつれて卵子の働きが衰えていきます。

3. 妊娠中に病気にかかりやすい

高齢出産は、妊娠中に胎児だけでなく母体にも大きな負担がかかるため、体調不良や病気になる人もいます。

特に、胎児と妊婦さんの命に関わる恐れがある「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」などには注意が必要です。妊娠高血圧症候群は40歳、妊娠糖尿病は35歳以上になると発症のリスクが高まります(※1)。

他にも、全身が疲れる甲状腺疾患、流産の原因にもなる子宮筋腫、卵巣に腫瘍ができる卵巣腫瘍、胎盤が子宮口を塞いでしまう前置胎盤などを発症する確率が上がるとされています。

4. 流産や早産の確率が上がる

高齢出産では、流産や早産、切迫流産や切迫早産の確率が高まります。

妊娠初期の流産は、胎児側の染色体異常が主な原因です。先に説明したとおり、高齢になると染色体異常が起こりやすくなるため、流産の確率も高くなります。

年齢別の自然流産率

上のグラフは厚生労働省が発表している、母の年齢と自然流産率のデータをもとに作成しています。35歳以上の自然流産率は約21%、40歳以上では約41%と、25~34歳の妊婦さんと比べて流産する確率が高まります(※6)。

早産は、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離、前置胎盤などによって引き起こされることがありますが、高齢になるとこれらの発症リスクが高まる傾向があり、結果的に早産につながりやすくなります。

5.難産になりやすい

個人差はあるものの、出産時の年齢が上がるにつれて、体力が低下したり産道が広がりにくくなったりします。そのため、出産がスムーズに進まず時間がかかるなど、難産になるケースもあります。

6. 周産期死亡率が上がりやすい

40歳以上では、妊娠22週以降の死産と生後1週未満の新生児死亡をあわせた「周産期死亡率」も高くなります。周産期死亡率は、出産1,000件に対して40~44歳で7.8件、45歳以上では9.4件になります(※7)。

ただし先にも説明したように、40歳以上の女性から生まれる赤ちゃんの人数の割合は年々増加傾向にあり、40歳以上でも、無事に出産を終える人がたくさんいます。

高齢出産についてパートナーと一緒に考えることも大切

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高齢妊娠・出産は年々増えていますが、あまり知識を得ないまま妊娠・出産を迎えて、さまざまなリスクに戸惑う人がいるのは事実です。これは女性に限らず、男性も同じだといえます。

一方で、子どもを産む年齢が高くなることによって、経済的にも精神的にも余裕ができた状態で子育てができるなど、高齢出産だからこその良い面もあるでしょう。

起こり得るリスクとメリットを理解したうえで、高齢での妊娠や出産にどう臨むべきなのか、パートナーと相談していけるといいですね。

妊娠・出産に向けて準備をしていこう

実際に昨今は高齢妊娠・出産が増えていて、無事に出産を迎えている人がたくさんいます。

ホルモンバランスを整えるために食生活を見直す、体力をつけるために適度な運動をするなど、妊娠・出産に向けて前向きに取り組んでいけるといいですね。

高齢出産に関して不安や悩みがあるときは、自己判断せずに、医師に相談しましょう。

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